透明投手シュウ・レイジ、幽界プロ野球で“幻のノーヒットノーラン”達成

霧がかった夜の幽都ドームで、無人のマウンドとキャッチャーだけが照らされている様子。 野球
幽都ドームで歴史的な“完全透明ノーヒットノーラン”の瞬間を迎えた現場。

かつてない“不可視の快挙”が、霊界スポーツ最大の舞台で達成された。28日夜、幽都ドームで行われた霊界プロ野球連盟(GNPBL)春季リーグ第23節、幽都スモークス対天狐ファングス戦で、透明幽霊投手の周 霊士(シュウ・レイジ、享年32)が、野球史上初となる『完全透明ノーヒットノーラン』を成し遂げた。この前代未聞の偉業に、ダッグアウトの選手から観客、さらには現世野球ファンまでが騒然としている。

快挙の舞台となった幽都ドームは、普段から現世より少し物騒なプレースタイルで知られるが、今夜ばかりは最初から異様な雰囲気に包まれた。初回、先発したシュウ・レイジの姿がマウンド上から消失。球審・魂田(たまだ)権吉氏が「本日も透明状態での登板」とアナウンスすると、スタンドには驚きと期待が入り混じった歓声が響いた。その後、投げられるボールもキャッチャーミットも空気を切る音しかせず、打席の天狐ファングス打者陣は「まるで感じられない」と困惑を隠せないまま、ひたすら三振、内野ゴロ、絶妙なファウルで凡退を繰り返した。

シュウ・レイジが得点圏にランナーすら進ませなかったのは圧巻だが、実際に誰も彼の投球フォームを見ていない。唯一の手掛かりは、捕手・影山ナナミ(享年19)が受ける“霊気で静電気が走った”という証言と、時折バッターのバットをすり抜けてから空間が震えるような鳴動音だけだった。五回裏には天狐ファングスの監督・白須 テンジン(年齢不詳)が「投手不在ではないか」と抗議したが、審判団と幽界連盟幹部による投球軌道のアストラル解析でも、すべて正規の投球であると認定された。リーグ規則では『この世に姿なき者の登板を禁止しない』となっており、結果が覆ることはなかった。

試合後、シュウ・レイジは恒例の“異界SNS”で「透明でも魂は見ている」とコメント。ファンからは「球場じゅうが針のように静まり返った」「無の恐怖を超えた」と絶賛の声が相次ぐ一方、「もしかしたら誰も投げてなかったのでは?」「これは審判泣かせすぎる」と疑念や戸惑いも広がっている。野球解説者の宙野ミカゲ(元外野手、享年41)は「死後の世界の野球も時代が変わった。次は“無音ホームラン”に期待したい」と語った。

なお、今季から導入されたオーラ測定判定システムも、今夜ばかりは計測不能のエラーを記録。関係者によれば、同様のパフォーマンスは幽界リーグ創設以来例がなく、今回の出来事を受けて次期規則改定の議論が進む可能性もあるという。現世の野球界にも一石を投じた“完全透明ノーヒットノーラン”。幽界プロ野球ならではの不可思議な進化に、今後も目が離せない。

コメント

  1. シュウ・レイジ選手、本当にすごいです。私は生前から現世のプロ野球を観てきましたが、球もフォームも見えないとか、幽界ならではですよね。透明投球、痺れました!

  2. 完全透明ノーヒットノーランとは…幽界スポーツも新時代突入ですね。正直、誰も本当に投げてたのかわからないのがミソ。昔の実体主義者としては少しモヤりますが、魂が震えました。

  3. 個人的に、天狐ファングス好きなので悔しいですが、こんな形の敗戦、現界では絶対味わえない体験。幽都ドームの鳴動音、昔を思い出して少し切なくなりました。

  4. 昔は消える魔球とかでざわついてたのに、今は完全透明か…成仏できない新世代魂たち、どこまでいくのやら。しかし審判団もよく認定できたな。ある意味職人芸。

  5. オーラ測定も壊れるってさすが幽界プロ。ルールが変わる前に、次は“無音ホームラン”期待してます!異界野球、これだから観るのやめられません。