幽界最大のエンターテインメントイベント「魂の夜会」が今年も放送され、死後の世界に住むあらゆる存在がテレビとサブスクリプション配信に熱狂した。視聴データによると、地下放送局のほか、霊界向け配信サービス「死後TV」や「ノガミ・プレミアム」でも歴代最高の同時視聴数を記録。生前と変わらぬバラエティ熱、そして新しい形式への対応が、例年以上の盛り上がりを見せた。
毎年恒例となった「魂の夜会」は、幽霊や妖怪、有名な怨霊までが一堂に会し、トークやコント、音楽にダンスと、ありとあらゆる異界芸能を披露するスペシャル番組だ。今年の司会は、440年目の進化を遂げた老婆型妖怪のオサキ・クニコと、37回目の現世修行帰りで話題の浮遊霊アラタ・トキオの絶妙なコンビ。「化け猫バンド」の生演奏にのせ、離魂ホスピタル現役院長のスガヌマ・ノリオが幽界伝統のお笑い漫才を披露する場面や、伝説の座敷童3人組の帰還ステージなど、まさに『死後のエンタメ全制覇』ともいえる内容となった。
視聴者からは放送直後から反響が相次ぎ、幽界向けSNS「亡友」のトレンドは「アラタの涙」や「スガヌマ院長の新ネタ」などで埋め尽くされた。「生前よりもバラエティ番組が楽しみになるなんて思わなかった」(主婦・48、妖怪歴19年)、「オサキ司会のマジカルひと言、圧巻です」(会社員・217、幽霊階層二級)といった投稿が目立ち、幽界住人たちの娯楽意識がますます高まっている様子だ。
また、今年は初の“現世ゲスト”として、地域の祈祷師協会を代表するカタクラ・ユウゾウ(祈祷師・65)が、分身(霊的投影)インタビューでサプライズ出演。幽界内外の文化が自然に交わる新時代の訪れを象徴する場面となり、専門家である死後社会学者のクズレ・リンタロウ博士は「境界線が年々希薄になる中、死後の住人にも現世事情が伝わりやすくなった。番組の影響は大きい」とコメントしている。
一方で、人気シリーズのサブスクリプション移行への賛否も浮上。例年は地上波(幽界波)独占だったが、今年は4つの動画配信サービスでほぼ同時配信に踏み切ったことから、「有料会員が増えて娯楽の格差が拡大するのでは」といった指摘も。一部幽族自治会からは「誰でも自由に楽しめる場であってほしい」という声明も発表されている。しかし全体的には、異界のエンタメを支えるためサブスク化もやむなし、という前向きな声が大勢を占めた。
番組制作委員長のミカド・ショウタロウは「生前、現世でヒットメーカーと呼ばれた私も、ここ幽界で2度目のエンタメ黄金期を迎えている。来年の特番は、現世と幽界を結ぶ同時中継も検討したい」と語った。今や“死後の定番行事”に成長した魂の夜会。エンタメの最前線は急速に進化し続けている。
コメント
魂の夜会、毎年楽しみにしてるけど、今年の化け猫バンドの演奏は鳥肌が立ちました!生前も音楽番組は好きだったけど、死後のほうが刺激的なんて、成仏できそうにないです。
現世から祈祷師のユウゾウさんが来たって聞いて驚きました!異界と現世の壁もどんどん薄くなってるんですね…来年は私も転生先からリモート観覧したいです。
まったく、サブスクない時代の亡者としては配信ばかりで戸惑う。幽界波で家族と集まって観るのが一番だったんだが…便利さとぬくもり、両方大事にしてほしいな。
オサキ・クニコさんの司会術、毎回圧巻ですね!440年目にしてあの余裕、憧れます。生前からの大ファンですが、死後も芸能は不滅だなあと実感しました。
魂の夜会がみんなのあの世の季節行事になってて嬉しい。でも最近のサブスク推進、格差が生まれるのはちょっと切ないですね。幽界自治会の声明、私も共感します。