【リード】冥界北部沿岸一帯で深刻化していた「幻の海洋プラスチック」問題に、幽霊アザラシのボランティア集団が画期的な解決策をもたらした。現世では見えない微細な幽質プラスチックを徹底回収したことで、死後世界の生物多様性向上への期待が高まっている。
冥界環境省が先週発表した調査によれば、通常の機器では検出不能とされてきた「幻のプラスチック片」が、冥界トカチェフ岬から冥海峡一帯の海底にかけて、年々増加していた。これらのゴーストプラスチックは生者の世界では認識できないが、幽霊アザラシや半身半靈の魚類たちの間では深刻な健康被害を引き起こしていたという。幽霊アザラシ救護協会代表のウラベ・フユトシ氏は「ゴーストプラスチックは我々のヒゲセンサーに引っかかる。吐き出そうにも、流れ着く速度の方がずっと早かった」と嘆く。
今年3月、ウラベ氏ら幽霊アザラシ約300頭は自主的に「海彼方のサルベージ隊」を結成。現世・異界の垣根を超えて、「オゾンミスト」を使った新しい回収手法を導入した。このオゾンミストを発生させることで、幽質のプラスチックは短期間で集光され、容易に除去できるという。現場班長のバイカ・タマキ氏（幽霊アザラシ・14歳）は「最初は正直、怪談じみた噂かと思ったが、目に見えて水が透明になった」と語る。作業の様子はドローン（幽質タイプB）でも記録され、冥界SNS『ユウカイータ』で数万回シェアされる人気ぶりとなった。
背景には、死後世界における生物多様性危機への危機感があるという。かつて冥界の海は、多様な幽霊魚や妖怪鯨、海坊主エビで賑わっていた。しかし、年々ゴーストプラスチックが堆積し、深海クラゲの姿が消えたり、シーサーペントの子供がヒレに異物を絡ませたりといった被害が相次いで報告されていた。死語保全協会のオグラ・モモヨ環境研究員（38）は「死後の世界であっても、生物多様性は連鎖的に失われ得る。環境意識を高めることが、我々幽界住民の責任だ」とコメントしている。
この幽霊アザラシ集団の活動は間もなく開催される第8回異界生物多様性サミットの目玉事例として表彰予定だ。市民からも「幽アザラシの活躍に元気をもらった」（死後小売業・51）、「生前よりキレイな海で泳げるとは感激だ」（半妖イルカ・17）など、称賛の声が相次いでいる。さらに、現世から漂着する幽質マイクロプラスチックの発生抑制へ向け、死後世界と現生者協議会による『パリ協定・異界版』の改訂協議も始まったばかり。幽界と現世をつなぐ新たな環境保全の流れから、今後も目が離せない。
コメント
幽霊アザラシたち、ほんとうにお疲れさまです！生前も海は好きでしたが、まさか成仏してから透明な水で泳げるとは思いませんでした。次は幽質ストロー問題も解決してほしいです。
こういう異界の団結力にはいつも驚かされます。昔は冥界の海も賑やかでしたよね…最近クラゲ見かけないの、やっぱりゴーストプラスチックのせいだったんだ。アザラシさんたちに感謝です。
オゾンミストで回収なんて発想は、現世では絶対に無理。幽霊アザラシならではの特殊能力ですね。幽質タイプBのドローン、私も転生記念に1台ほしいと思ってしまいました。
正直、幻のプラスチックなんて見えないし気にしてませんでしたけど、子どもシーサーペントたちの被害を知ってから他人事じゃなくなりました。死後でも生態系は大切なんですね。
パリ協定・異界版、ようやく本格的に動き出したのか。生前からこういう意識がもっとあればよかったのに…でも冥界から現世へも影響が伝わるといいな、と少し期待しています。