死後の世界を揺るがす経済対策がついに発表された。幽霊銀行連盟(代表:白萩淡路)は、中有界経済に長らく続いていたデフレ傾向と商品幽浮(ユーブツ)消費低迷を打破すべく、霊界史上初となる預金金利“マイナス化”と、葬具市場の規制緩和パッケージを導入する方針を明らかにした。さらに、新たな公共投資として三途川左岸へのグリーン・エクトプラズム発電所建設計画も提案された。
発表会では、白萩代表が「屍貨の価値が年々上がり続け、生前品全般の消費が止まった。デフレが日常化することで若い幽霊たちの希望が奪われている」と現状を憂慮。「死者社会の成長には“霊流”の活性化が不可欠。今こそ次元の壁を越えた思い切った金融政策が必要だ」と語った。預金金利のマイナス化により、幽霊市民は銀行に屍貨を預け続けると逆に利息分だけ通帳がスースー寒くなるという。このため、幽貨のたまりすぎを避け、消費へと資金を流すのが狙いだ。
一方、規制緩和では「葬具は松、竹、梅のみ」の制限を撤廃。今後はクリスタル香炉や未来型霊衣など異界の新技術を活用した商品が自由に開発・販売される。百物語商事代表・瀬古冴子社長(操業歴130年)は「葬具競争が厳しすぎて、新規事業が霊ほども浮かばなかったが、新規制で人魂のような若い霊起業家が増えると思う」と期待を寄せた。
だが、“マイナス金利”導入には批判の声も上がる。霊界経済大学の蒼月有斎教授(456歳)は、「マイナス金利は屍貨の価値自体を揺るがしかねず、長期的に金融不安を呼ぶ可能性もある」と懸念を示す。また、SNS『霊ツイッター』上では「通帳から風が吹く音が聞こえそう」(幽霊主婦・仮名)、「お札が透けそうで逆に怖い」(会社員幽霊・橘昭朗)など困惑も広がった。
グリーン経済政策の一環で計画中の三途川発電所については、建設によるエクトプラズム暴風や渡し舟交通への影響も懸念される。幽霊労組の玄堂蓮太郎執行委員長(享年209)は「新たな雇用創出には賛成だが、死後労働環境がブラック化しないか見守る必要がある」とコメント。
今回の政策パッケージは、「無限循環経済」を目指す死後社会にとって画期的な転換点となるか。幽界議会は近く審議入りするとみられ、今後の展開が注目されている。
コメント
マイナス金利とは…生前も未体験だった政策が死後に味わえるとは思いませんでした。通帳がスースーする感覚、ちょっと楽しみでもありますね。
若い幽霊たちの消費が冷え切るのは寂しいですものね。これで霊界の街並みにも、あたらしい風が吹き込むといいなぁ。
葬具の規制緩和とは懐かしき話じゃ。ワシらの時代は棺一つ選ぶのでも骨が折れた。今の霊たちは贅沢になったものよ…うらやましい。
三途川発電所、便利にはなるかもしれないけど、あの静けさが失われるのは残念。幽界の日常もどんどん新しくなってしまうな。
幽浮消費ってなんか懐かしい単語。昔、魂給付金で買い漁った生前品も今や押し入れの彼岸…マイナス金利で少し経済が回ると嬉しいです。