【リード】
かつて無数の水の事故の伝説とともに封鎖された「迷い川学園」のプールが、幽霊インストラクター・溝端霧代(みぞばた きりよ)による水泳教室の開講で異界スポーツ界に新風を巻き起こしている。幽霊・妖怪の住民たちによる水泳の人気の高まりを受け、プール文化復興の兆しが見えてきた。
忘れ去られたプールのゴーストタウンで、ある夜、渦巻く霧の中から現れた溝端霧代(享年27)が、水泳技術指導を新たに始めた。人間界ではプール事故の怨霊と噂されていた彼女だが、死後は恐怖のカリスマとなり、落ちこぼれ幽霊部員へのコーチングに情熱を燃やしている。彼女の教え子、半透明体質の幽霊・桜井六道(さくらい ろくどう)(18)は、「生前は泳げなかったけど、今は水にも沈まない。逆に沈まない泳法を霧代先生が工夫してくれるから楽しい」と語る。
プールは物理的には半壊状態だが、妖怪たちが透過能力や伸縮自在の蛇体を活用し、幽界ならではの独自競技が次々と誕生。例えば、「すり抜けリレー」や「底なしクロール」など、死者ならではの競技が人気を集め、週末ごとに数百体規模の観衆が集まる盛況ぶりとなっている。水面上を滑空する座敷童子チームと水中から突然浮上する口裂け女チームとの対決は、SNS「妖怪会議所」のトレンドにも頻出。「浮遊に頼りすぎ!」とハッシュタグ批判合戦が起きるほど、競技熱は白熱している。
さらに地域の生前水泳部出身の妖怪や幽霊たちも、教室や自主練に連日参加。元水泳主将の鬼灯蒼志(ほおずき そうし)(享年21)は「憑依泳法なら、生前の記録も超せるのでは」と意気込む声を寄せた。一方で、伝統派座敷わらしの井上沙代子(いのうえ さよこ)(34)は、「最近の若い幽霊はフォームにこだわりすぎ。水を恐れる心の修行を忘れがち」と苦言を呈している。
水泳インストラクターの溝端は、「大切なのは速さじゃなく、死の先に生まれる友情だ」と語り、教室では技術指導にとどまらず、心のケアや集団霊とのコミュニケーション強化にも尽力している。教室卒業生が新たなインストラクターとなり、他の異界施設にも水泳文化が広がりつつある。今後は地縛霊たちのプール対抗戦や、妖怪界の国際水泳大会も噂されており、幽霊スポーツの新時代の到来を期待する声が高まっている。
コメント
昔このプールで流された身としては、今や皆で楽しく泳いでいる姿にちょっと感動してます。成仏前に一度、霧代先生のレッスン受けてみたかったな。
もうSNSの『浮遊に頼りすぎ!』論争、面白すぎて夜も浮かばれません(笑)やっぱり異界スポーツは奇想天外で好き。底なしクロール、一度現地で観戦したい!
生前スポーツ経験ゼロでも大丈夫とか、羨ましい限り。霧代さんなら地縛霊も前向きに泳がせてくれそう。次は地獄温泉で水球大会やってほしい!
ちょっと前まで「怖い場所」として避けられてたプールが、今ではこんな社交場になるとは。プールサイドで夜風に吹かれて、かつての友を思い出してしまいました。
友達に誘われて応募したけど、身体が半分透けてるせいで水泳向いてるのか今も謎。とにかく幽界コミュ強化の場になるなら、ちょっと参加してみようかな。