異界最大手『永久暗黒社』で影組合が史上初のストライキ、職場改革求む声高まる

深夜の霧に包まれたオフィスビル前で、無数の影が街灯の脇に集まり壁のように立ち並んでいる様子。 労働
異界最大手企業で史上初の影たちによるストライキが決行された瞬間。

夜半の霧が濃く立ち込める霊京区で、死者たちがこぞって勤める異界最大手企業『永久暗黒社』にて、影の労働者のみで組織される労働組合“シャドウズ・ユニオン”が史上初となるストライキを決行した。暗闇の中で従順とされてきた影たちが、待遇改善と労働時間の短縮を求め集結した例はこれまでなく、職場改革へのうねりが死後の世界にも本格化しつつある様相だ。

同社は、街の灯りを消す業務や夜道の不安演出、幽霊の就労環境維持など幅広い事業を展開し、死者、妖怪、強力な怨霊から人気の職場となってきた。しかし、昨秋導入の『24時以降も休憩なし影分身シフト』が職場に波紋を広げ、過去最高水準の影の消耗や“自己消滅”事故が続出。「ここ数年で働き方が地獄そのもの」との声も囁かれていた。

今回ストライキの発端となったのは、正社員の影である黒夜墨之介(くろや すみのすけ・205没)がSNSに“暗黒社なのに暗さも休みも足りない”と投稿したこと。たちまち同僚影らの賛同を集め、シャドウズ・ユニオンを中心に「一億総影活躍社会」を掲げて集結。東京河原町支社ビルでは1500体を超える大小様々な影が出現し、一斉に“消えます!スト”を実施。建物の照明器具や港の灯台近くに集団で立ち枯れる“影の壁”も現出し、通勤中の幽霊OLや後期成仏希望者からは驚きの声があがった。

一方、永久暗黒社側は「影の自主性を尊重したい。しかし業務量圧縮は急には難しく、上層部に影響も及ぶ」とコメント。死後労政庁の雲宮深海(くもみや みうみ・労働政策局長)は「死者にも適正な休息は不可欠。永久暗黒社に是正勧告を行う」と指摘した。

Twitter幽界支部では「最近、仕事道具だった自分の影がやつれてきた」「死んでもブラックは嫌」「ノマド派閥の幽霊たちがうらやましい」といった共感の声が飛び交っている。

シャドウズ・ユニオン書記長、幽ヶ谷滴男(かすみがや しずくお・享年41)は「人も影も死んだら自由、はずなのに。新たな死後の働き方を私たちが切り拓く」と決意を語った。異界職場に新たな光が射すのか、今後の動向に注目が集まっている。

コメント

  1. やっぱり影さんたちも大変なんですね…。私はまだ幽界転職して間もないけど、『自己消滅』事故の話は本当に怖いです。もっと休息が認められる世の中になってほしい。

  2. えっ、暗黒社でストライキ!?前世でも労働改革とか流行ってたけど、まさかこっちでも起きるとは思わなかった…影さん達、無理しすぎず頑張ってほしい。

  3. 正直、影の仕事って黙々とやるものだと思ってたのでビックリしました。でも、私も夜の灯り演出のお手伝いやってて、最近“闇が薄い”って感じます。影にも光を、ですね。

  4. 暗黒社の上層部、いつも『影の自主性』って言うだけで何も変わらないよな…。昔から幽界の大企業はどこもブラック体質。いっそ成仏してノマドになるか迷う。

  5. 『暗さも休みも足りない』って本当に絶妙なボヤきだわ…。死後の世界でも結局働き方改革って終わらない運命なんだなあ。あの世でも、ちょっとだけ希望が見えるニュースで良かったです。