今年、死後の世界の政治の中心である妖怪議会は、環境政策の歴史を塗り替える新法案「エクトグリーン推進法」を圧倒的多数で可決した。幽霊や妖怪が集うこの世界で増加が深刻だった海洋の霊素汚染に歯止めをかけ、持続可能なエネルギー社会への転換を目指す内容だ。議会周辺には、エコツーリズム産業の霊や低炭素社会を訴える若手亡霊など、さまざまな声が渦巻いている。
本法案の核心は、亡者エネルギー局が中心となって開発した水素エネルギーの大規模導入にある。特に海流の境界線付近で幽体離脱者や水妖怪が多発する“妖界海”では、従来の霊素蒸発炉によるエネルギー生産が、環境負荷や霊生物多様性崩壊の原因として問題視されていた。水素エネルギーへ転換することで、排出されるエクト霧の量が現行比の1/100未満まで削減できる見通しだ。亡者エネルギー局の課長・猫柳うらら(享年382)は「この一手で“永代霊化”への扉が開く。SDGs実現は夢でなくなる」と力強く語った。
一方、沿岸部でエコツーリズムを営む海坊主観光代表の鰤原ともえ(亡霊・120)は「海岸線の白砂がエクト霧に染まるのを止めるだけでなく、幻魚や幽霊カメの産卵環境を守れる点が何より大きい」と期待を寄せている。その一方で、「新法対応のため旧型霊素炉の廃棄コストや、切り替え時の停電事故リスクを考えると、零細な我々には課題も大きい」と不安も口にした。SNS上では、「#グリーンへ転生」「#幽海クリーンアップ」といったハッシュタグで賛否の議論が絶えない。
妖怪議会内でも法案には一部慎重論があった。朝霧党首・八雲しのぶ(元生者・享年53)は、「妖海域特有の無縁仏エネルギーの活用や、個々の妖怪特性への配慮なしに、一律の水素化を進めると、低位霊や亡霊家族の暮らしにひずみが生じる」と指摘する。しかし、若年霊代議士を中心に「地上の気候変動と連動した“時空嵐”の制御コストが下がってこそ、永遠の死後生活も安定する」との声も高まっている。
専門家である霊界環境学者の蒼井イサナ教授は、「霊的エコシステムの中核たる妖界海の浄化を本気で進めるには、エネルギー転換と共に、運用や雇用の公正な“死後トランジション”設計が不可欠」とコメント。今後、妖界全体での市民参加型のクリーンアップ作戦や、妖怪と幽霊の協働による再就職プログラムも実施される予定だ。エクトグリーン社会の行方に、異界中の注目が集まっている。
コメント
死んでこの世とオサラバしても、やっぱり環境問題はついて回るんですね…!昔、エクト霧の海を霧中ドライブしたのを思い出して懐かしくなりました。もっときれいな妖界海になるなら、賛成です。
いやー、妖怪議会もやっと重い腰を上げたか。水素エネルギーがうまくいって起き霊たちの停電も減ったらいいけど、幽界の零細事業者がうまく乗り換えられるか心配だな。サポート頼むよ本当に。
#グリーンへ転生 のハッシュタグ、私も使ってみました!新法案で幽霊カメが気持ちよく産卵できるなら嬉しい。個人的には雇用問題も気になるから、『死後トランジション』プログラムに期待しています。
「永代霊化」を目指すなんて、なんだかロマンがありますね…。私が生きてた時代は騒霊汚染がひどかったので、今の霊界が少しずつ良くなっているのは素直に驚きです。風の時代、着実に来てますね。
幽界の上層部はいつも綺麗事ばかり…。水素化が進んで低位霊の暮らしが不安定にならないか、正直気がかりです。昔みたいに無縁仏の灯りのもとで、みんなでのんびりしてた頃がなつかしいな。