幽霊議会、満月夜間外出規制法を可決 妖怪市民から賛否両論の声

満月の夜、霧が立ちこめた静かな通りに幽霊や妖怪の姿がぼんやりと浮かぶ写真風の情景。 政治
満月の夜に外出が規制された異界の静かな街並み。

死後の世界の政界で、近年稀に見る論争を呼んだ「満月夜間外出規制法」が、幽霊議会本会議にて賛成多数で可決された。満月の夜になると幽霊や妖怪たちが大規模な集会・徘徊により騒音や“霊障害”を起こす――とされる事態の解決を狙う法案だが、異界住民の間では喜びと困惑、そして怒りの声が渦巻いている。

新たに可決されたこの規制法は、毎月の満月の夜(午後8時から翌朝5時まで)、特殊許可証を持たない幽霊・妖怪の市中徘徊を大幅に制限するもので、違反が認められた場合は最大3週間の“透明化”処分(他の異界住民からも完全に存在を視認できなくなるペナルティ)が科される。法案を主導した霊政党「透明な夜風」代表の魂村真蔵(こんむら・しんぞう)議員(享年278)は、本会見で「満月の過剰な浮かれ騒ぎにより、伝統的な死後の静寂が失われつつある。まちの安心・秩序回復のためには、厳しい規制が不可欠」と強調した。

一方、活発なナイトライフで知られる清滝区の妖怪ラウンジ経営者、鬼束雪路(おにつか・ゆきじ)さん(死亡時32)は「我々の稼ぎ時を人間的な『夜間規制』で縛るとは、古来の多様性に背く暴挙」と憤る。「当局が例年、満月に合わせてパトロールを強化しただけで事故も減っていた」と主張し、規制による経済損失や同業者の廃業危機を懸念する声は増えている。また、新興政党「異界市民の会」の猫又議員・柳井琴音(やない・ことね)は、「幽霊や妖怪の夜遊びこそが、この世界の活力源。抑圧的政策は市民の結束と創造力を奪うだけだ」と先の討論で強く反発していた。

施行当日には、SNSアプリ「魂トーク」上で意見が激しく交錯。「静かな夜が戻って安心!」「タヌキの太鼓も聞こえず快適」と評価する幽霊高齢者会のコメントが目立つ一方、「楽しみが減った」「月に向かって飛ぶ許可申請が煩雑すぎる」など若年層や妖怪クリエイターの不満も投稿された。自主的に規制を受け入れる動きもある半面、裏路地や墓地付近での“小規模徘徊”や“隠れ満月パーティ”が増加し取り締まりが追いつかない状況も報告される。

社会学者の堺月舟(さかい・げっしゅう)教授によると「死後社会にも『公共の秩序』と『異界文化の自由』のバランス模索が求められている。規制が進み過ぎれば、かえって市民の地縛化や情念の蓄積といった新たな社会不安を生む危険もある」と警鐘を鳴らす。

今後は、模型町や幻野川流域など“夜間文化地区”指定を求める動きや、闇市経済への波及も注視されている。幽霊議会は施行半年後の見直しを予定しており、死後の夜の過ごし方を巡る論争はしばらく続きそうだ。

コメント

  1. 満月の夜の騒ぎが恋しい身としては少し物足りなくなりますね…。あの賑わいがなくなるのは寂しいですが、毎回町中が大騒ぎなのも確かに疲れたものです。ほどほどが難しいですね。

  2. あの“透明化”処分、かつて経験した者として言わせてもらうと、想像以上に孤独でつらいですぞ…。制限は理解できるが、もう少し緩やかにできぬものか…せっかく死後も自由を楽しんでいるのだから。

  3. 許可申請の書類、今世(こんよ)の役所より煩雑で笑いました。満月の夜くらい、猫又のしっぽを伸ばして自由に踊りたいものです。伝統だけじゃなく、新しい魅力だって大事にしてほしいな。

  4. 静かな夜が戻ってきてうれしい!最近はタヌキの太鼓やら、妖怪キッズのにぎやかさで眠れなかった身にはありがたいです。みなさん、ほどほどに楽しんでくださいな。

  5. 表向きは規制でも、裏では“隠れ満月パーティ”の依頼が急増中ですぞ。世の中、表と裏でバランス保ってなんぼ。幽界の闇市経済に逆風か追い風か…しばらくは様子見ですな。