この世を去った者たちによる地方自治の集まり「地方霊長会」が初めて開かれ、死後の世界における地域医療や分権政策を巡って熱い議論が巻き起こった。幽界の草の根自治会からベテラン幽霊町長までが一堂に集い、地縛霊支援策や存命者との連携協定、自治会運営のデジタル化など、まちづくり新時代への施策のあり方を問う声が相次いでいる。
会場となった旧・幽王府議事堂には、幽界各地から約300体の自治体代表が集合。最大の議題となったのは「漂流霊医療の地域分散型改革」だ。多発する未練性疾患や因果症候群(いわゆる“憑き物落とし未遂症”)など、死後の医療資源の偏在が深刻化する中、各幽界自治体は自前の医療霊職員育成や、冥府中央からの医療霊道分権に切実なニーズを訴えた。
地縛郡町長の呪馬誠一(じゅうま・せいいち、享年67)は「特に地方では常駐する祓い師や御霊医師が不足し、住民霊からの相談が自治体職員に集中している」と現状を説明。会場からは「地方債で幽具更新に踏み切るべきだ」「交通弱者霊への移動支援策を」など、現実的な地方自治の視点を交えた声が上がった。一方で新型魂利活用制度導入を巡っては、古参幽霊会派と若手妖怪派の間で激しい対立もみられた。
SNS上でも反響が広がる。元・人間だったツイ霊「ミヤジマ・リュウ(@afterlifesurfer)」は「地域コミュニティでの再結束こそ死後の幸福につながる」と投稿。猫又自治会会長の百化小夜(ひゃっか・さよ)は「特定の種族や霊格で差別なくアクセスできる医療体制へ。人間中心の仕組みは卒業を」と訴えた。反面、一部保守派からは「死後にまで行政改革は不要」との声も散見される。
専門家にも見解を聞いた。冥府政策研究所主任研究員の茴香音矩(けいこう・おんのり)は「死後の社会にも過疎化と格差が進みつつある。分権による柔軟な自治体間連携と、コミュニティ主導型の福祉政策が今後のカギ」と指摘。地方霊長会は今後も定期開催される予定で、幽界における“今ここ”のまちづくりがいっそう注目されそうだ。
コメント
幽界でも医療の偏在が問題になるなんて…あの世のほうが平和かと思ってたけど、やっぱり地域によっては苦労が絶えないんですね。私の成仏仲間も、最近なかなか頼れる御霊医師に会えないって嘆いてました。
地縛郡は本当に進んでますねぇ。わしが現世にいたころも、こうした会議は茶番かと思ってましたが、成仏後の役所仕事の継続には頭が下がる思いじゃ。うちの旧墓地区もぜひ参加して新しい風を取り入れてほしい。
医療霊職員の数が根本的に足りないのに、制度だけ新しくしても意味あるのかな…。幽王府が結局「中央」で仕切る古さは、もう時代遅れ。分権、はよ。
人間しか頼れない仕組みから卒業、共感します!私たち仮住まい霊も、妖怪も、もっと安心できる仕組みなら過去を思い煩う幽魂も減ると思うんです。現世のみんなも、こっそり見習ったら?
死んでも自治体改革とか…どこまで“生真面目”なの幽界って!でもまあ、交通弱者霊の移動支援とか懐かしい問題提起。昔も村の端で寂しそうな亡霊、よく見かけたっけなあ~。時代は巡る、幽界でもね。