死者の町・黄泉野区の異界第二中等学園にて、今年度から導入されたAI教育システム「メモリウム」は教師たちの成長意欲に新たな風を吹き込んでいる。霊界の子どもたちが集うこの学園では、元武士の幽霊教師・椎名苔助(410)がAIアシスタントと共にプロジェクト型学習を実践したことで、教員自らが“学び直す”姿勢が話題を呼んでいる。
今春からAI教育システム「メモリウム」が配備され、黒板に書かれた文字が自動で生徒の霊界端末に転送されたり、プロジェクト進行に必要な資料が霧のように現れて消えるなど、授業の進行が大きく変化した。その結果、教師だけでなく生徒たちの学び方に大きな変革が生じている。特に椎名苔助は『成仏するまでにもう一度自分自身をアップデートしたい』と語り、400年以上前の教法を見直し、AIと協働して教材開発や評価方法の刷新に挑戦。プロジェクト型学習の中で『平安時代と現代の結界安全対策』をテーマにしたグループ発表を取り入れ、教師自身もAIのアドバイスを受けながら歴史資料の読み直しを行った。
生徒会長の河原呑太郎(死後15年)は『苔助先生がAIと議論する様子は新鮮。“答え”を教えてもらうだけでなく、一緒に考えてくれる雰囲気がうれしい。自分も成長できる気がする』と語る。最近では教師同士のAI活用ワークショップも開かれ、教員が互いに学びあう文化が生まれつつある。
一方、幽霊保護者たちのSNSグループ「霊縁教育ネット」では、急激なAI導入に戸惑いもみられる。妖怪保護者の松波胡蝶(享年102)は『子どもの自主性が育つのはいいが、教員がAIに頼り切りになるのでは』という声も寄せた。しかし教育評論家・桜橋蜜朗(死後42年)は『幽界の教師は時代や成仏理由も多様。AIを介して互いの経験をつなぐことで自身の“死後成長”が可能になる。この動きは異界教育にとって画期的』とコメントしている。
今後、異界第二中等学園はAIとの共同開発による“死者向けPBL(プロジェクト型学習)”カリキュラムと、定期的な亡者・妖怪教師の成長サポートを組み込む予定。椎名苔助は“成仏の道も一歩から。AIにだって答えきれない謎を、子どもたちと一緒に解き明かしたい”と話す。教師が“死後”すらアップデートできる異界の先進教育。その行方から目が離せない。
コメント
苔助先生がまだ成仏せずに学び続けている姿に感動しました。私も幽界で何百年もマンネリだったけど、こんなふうに新しいこと挑戦したいです。AIと一緒に勉強できるなんて羨ましい!
AIが授業に本格参入したのは衝撃。でも、百年前の自分たちのやり方に固執しすぎていた気もする。この世もあの世も時代と共に変わるんだなあと実感。うちの息子もメモリウム触ってるけど、ちょっと羨ましい気分です。
教師がAIに頼りすぎるんじゃって意見、ちょっとわかる気がします。うちら昔は、師匠の背中見て学べって言われてきた世代だから…でも苔助先生ならうまくバランスとってくれそう。霊界も時代ですね。
生徒たちと一緒にアップデートする先生、素敵ですね。成仏をゴールじゃなく次の学びの始まりと考える姿勢、私も見習いたいです。メモリウムで調べ物も早くなって、歴史の授業が楽しそう。
平安時代の結界安全対策を現代と比べるって、あの世ならではの授業ですよね。生前は学校苦手だったけど、異界学園の自由さにちょっと憧れます。どうか先生方も生徒も、AIに魂まで持っていかれませんように!