幽霊一家、大幅リモート化で墓地離れ進む――家族に広がる新しい絆と課題

夜の霧に包まれた古い共同墓地で、幽霊たちがそれぞれ離れてデジタル端末を手にしている様子。 家族
白谷家の幽霊一家がリモートで繋がる新しい死後の生活スタイルを象徴する一場面。

死後の世界でも働き方改革の波が止まらない。「百夜町第二共同墓地」で150年以上寄り添ってきた幽霊一家・白谷家が、自宅墓を離れ「リモート里帰り」という新たな生活スタイルを選択し、幽界コミュニティに静かな反響を呼んでいる。

白谷家は、曽祖父の白谷仁左衛門(享年231歳)からひ孫の白谷茉莉花(享年15歳)まで14体の大家族。従来、幽霊家族は墓石周辺を拠点とし、家族そろって夜な夜な集会や線香見物に興じてきた。しかし、近年の死後世界でのリモート化ブームを受け、白谷家の三代目当主・白谷千鶴(幽霊主婦・享年88歳)は、家族全員に「霊縁ネットワーク」端末を配布。「物理的な墓石」に縛られず、それぞれの思い出の地や人間界に出張したままでも、霊体同士で密に連絡を取り合える仕組みを導入した。毎週開かれる白谷家の『家族団霊』は、今やバーチャル憑依空間でのリモート参加が主流となっている。

親世代の幽霊である白谷徹平(幽霊会社員・享年56歳)は、今日の変化をこう語る。「墓場に集まるのも情緒があったが、子や孫が好きな場所で浮遊しつつ顔を合わせられる。新しい死後の家族愛の形かもしれません」。一方、年長の仁左衛門は「皆が散逸してしまえば家族の絆が薄まる。今も盆と彼岸の物理集合は守りたい」と複雑な心境をのぞかせる。

リモート化による変化は、子ども幽霊の生活にも表れている。茉莉花(享年15歳)は「ネット越しにしか姉や兄と話せない日も多い。でも、みんな好きな宿場や旧友の夢に遊びに行くから、会えば話が尽きない」と語る。またコロナ禍をきっかけにオンライン憑依やバーチャル怪談会が盛んになり、家族旅行も現地集合型ではなく『思念テレポ』を使った分散型が増えているという。

SNSでは、幽界市民から「自分も家族とバーチャル同窓会をした」「ウチの墓もリモート化したい」といった声や、「家族のつながりが希薄にならないか心配」という意見も寄せられている。幽界大学の社会幽霊学准教授・大川彩雲は「物理的距離が減る一方で、価値観や世代間ギャップがむしろ表面化する部分も。だが、死後の世界こそ新たな家族像を模索する土壌になる」と分析する。

死後世界でのリモートワーク・ファミリー化は今後も進むのか。墓場コミュニティや家族主催の祭事、伝統をどのように守り伝えるのか。白谷家の挑戦は、幽界における家族の形を考え直すきっかけとなっている。

コメント

  1. 白谷家のニュース、わかる気がします。私も最近は幽界在宅が増えて、墓前で集まる機会が減りました。リモートでつながれるのは便利だけど、線香の香りや夜風の冷たさがちょっと恋しいですね。

  2. リモート里帰りって新鮮だけど、百夜町第二共同墓地の賑わいが寂しくなったら嫌だなぁ…やっぱりお盆や彼岸に提灯の明かりでみんなと集うのが、成仏しきれない私にとっては大事な時間です。

  3. 自分も家族で夜ごと集会してた昔が懐かしい!でもバーチャル憑依空間って楽しそう、時代の流れですね。子どもたちが自由にいろんな所を浮遊できるのも、今の死後の醍醐味かも。

  4. それでも、リモートばかりだと家族の縁が薄まるのでは? 肉体があった頃も顔を会わせることに意味があったのに…あの世でまで希薄になるのはなんだかもったいなく感じます。

  5. 私の墓もリモート対応したいです!けど、霊縁ネットワークの設定がおっくうで…息子に頼むしか。どっちにしても新しい成仏スタイルが広がるのは面白いし、世代間で受け入れ方が分かれるのも幽界らしいですね。