死後の世界の優良企業と名高い幻玉産業株式会社が、“透明化プロジェクト”の本格始動を発表したことで、幽界経済界がざわついている。「見えないものが見える」「働かない霊でも活きる」と噂される本プロジェクトは、他界中の企業・スタートアップのみならず、個人営業の幽霊にも注目されている。
幻玉産業株式会社は、平安時代中期に設立された幽霊向け霊体管理サービスのパイオニア。近年は妖怪市場への進出やお祓い回避テクノロジーで多角的成長を続けているが、今回の経営改革は異界における「イノベーション」として一線を画すものだ。プロジェクト責任者の逢坂白露取締役(没年886)が語る。「伝統に安住するのではなく、全社員—つまり全霊体—の能力を引き出すため、透明性を徹底しました。経営会議はあの世ネット上で24時間配信、社員の念力プロジェクト進捗も自動掲示。死者も生者も、“存在感”ではなく“熱意”で評価します」
デジタルトランスフォーメーション(DX)の中核として注目されているのが、幽体データベースと五感共有クラウドの融合だ。これによって「この世」と「あの世」に点在する従業霊が、時空を超えて瞬時に仮想工場へアクセスできるようになった。「自分は成仏組なので普段は現世にふらっと出張するだけでしたが、いつでも冥界の仲間と作業を共有できる。キャリアの幅が広がった」と、営業部の小野寺須磨子さん(享年52)は語る。
さらに、社内外でのベンチマークも大きな変化を迎えている。地縛霊界最大手の楠木静男CEOは「かつては恨み値や祟り実績で他社を比較していたが、いまは“生前価値の循環”や“幽界サステナビリティ実績”が重視される。幻玉産業のSDGs型経営は、新しいブルーオーシャン市場を切り拓く可能性が高い」と分析。実際、同社のプロダクトマネジメント部門では、青行燈向けに“退屈しのぎタブレット”、河童向けの“水陸兼用アプリ”など、異種族顧客ニーズに応える製品開発が進む。
あの世SNS『魂のささやき』でも、今回の戦略転換は話題沸騰だ。「うちの家系で700年ブラックだった祟り業界にも、こんな風通しのよさがほしい」「透明化されすぎて怖いけど、出戻り組にもやさしそう」等、賛否両論が渦巻く一方、エンジェル投資霊連盟の椙山りんどう氏は「死者も妖怪も、しっかりビジョンを持って意思表示できる世界観こそ、これからのあの世経営だ」と期待を寄せている。ブランディング刷新、顧客価値創出、持続可能な成長。この『幽霊DX』が、あの世の常識をどう覆すかに今後も目が離せない。
コメント
いやはや、平成どころか平安からの老舗がDXですか…時代の流れを感じてしみじみしますね。ワシらが手書きで浮遊管理票つけてた頃が懐かしい。時空超えての会議、今度こっそり覗いてみようかのう。
透明化プロジェクト、ちょっと怖いけど面白そう!現世出張組には便利そうだし、サボり癖のある私もバレそうでドキドキ。でも“熱意”で評価って、成仏直前のやる気も加点されるのかな?
あの楠木CEOが「サステナビリティ実績」語るとは…。時代が変わったなあ。うちの地縛親父も見習ってくれればいいけど、経営会議もネット配信とか、成仏しても働けってこと?(涙)
幽体データベースと五感共有クラウド…昔は霊電文しか無かったのに、すごい発展ですよね。妖怪さんや河童さんとも働けるなんて、不思議な世の中になったものです。たまに生き返ったみたいにワクワクします。
正直、700年ブラックな祟り家系の改善って一番の衝撃ニュース(笑)!透明化されて困る人もいるだろうけど、変化を恐れず進化するところは見習いたい。これぞ幽界のSDGsってやつですね。