夜の玉響フルマラソンで波紋 ランニングアプリに幽体不正アクセス疑惑

夜の霧に包まれたスタート地点で幽霊や妖怪のランナーたちが集まっている様子のリアルな写真風画像。 マラソン
夜の玉響フルマラソン大会で集結する幽界ランナーたち。

今年も夜の玉響フルマラソン大会が幽界市で開催され、多種多様な幽霊・妖怪ランナーたちがスタート地点に集結した。今年の注目は、死後初参戦となる新米幽霊・蒼井ミナト(享年32)が導入した幽界向けランニングアプリ「霊速」でのデータ統合システムだった。しかし大会後、アプリ上で想定以上の完走記録が相次ぎ、目に見えない“無登録ランナー”の幽体侵入が疑われ、さらなる波紋を呼んでいる。

大会実行委員会によると、今大会は参加者全員が個人端末で「霊速」アプリを起動し、エネルギー体の活動量・霊的ペースなどが自動計測される仕組みで進行した。ところが、大会公式リザルト上では登録されていない幽体の記録が29例も検出され、そのうち最大で秒単位の高精度ペース記録を保持する“透明フォーム”という匿名ユーザーの存在が特に疑問視されている。透明フォームの記録したゴールタイムは2時間11分09秒。これは寿命未達ランナーの最速記録すら大幅に上回るもので、幽界SNS「幽横断」でも「姿が見えぬ最強ランナー」「幽体のリベンジ魂」など賛否が飛び交った。

本来、幽霊同士が霊波で交信しながら走る玉響マラソンでは、天狗やぬらりひょんなどのベテランペースメーカー陣(代表:河鹿イブキ/年齢不詳)が安全確認と事故予防を担ってきた。だが今年から導入されたアプリ管理型の走行監視にボランティアたちがうまく適合できず、一部の未登録幽霊が突然コースに出現し、「すり抜け事故」が3件発生。また、アプリのバグを利用し他者の走行記録に“憑依”することで、実際には負傷離脱していたバッグクロス河童・狭間コウヘイ(享年54)の記録が完走扱いとなる事態もあった。狭間は取材に「途中で脚のつくもし腱を痛め脱落した。なのに自分がゴール扱いとは驚いた」と困惑の表情を見せていた。

専門家の見解も割れる。幽界スポーツ科学会の有明スイコ教授(323)は「幽体マラソンでIT導入は不可避だが、存在のあいまいさゆえ不正も容易。霊波認証など生前にはない問題も多数生じている」と指摘。一方で妖精陣営のボランティア代表・羽生つぐみ(存在年不明)は、「透明フォームの走りは伝説。でも、アプリが記憶に残らない幽霊にもチャンスを与えた面もあるのでは」と肯定的だ。

マラソン後には、選手と観客の合同“供養ストレッチ”やペースメーカーによる反省会も開かれ、来年以降の大会進行の見直しが議論された。幽界ランニング連盟は「技術と伝統の調和が課題」とコメントしている。SNS上では「姿なきランナーたちに喝采を」「霊アプリの改修を」の声が並び、夜のマラソンブームがますます盛り上がる気配を見せている。

コメント

  1. 透明フォームの記録、正直すごすぎて震えました!転生を繰り返してもマラソンでこんな話題になるとは思わなかった…霊速アプリの安全対策はもう少し考えてほしいけど、幽界らしい自由さも好きです。

  2. 新米幽霊さんの初出場、なんだか懐かしいなあ。昔は霊波シャウトで応援するだけだったのに、今はアプリで管理なんですね。未登録幽体が紛れ込むあたりが玉響マラソンらしくてほっこりしました。

  3. バッグクロス河童さんの記録、他の幽霊に憑依されて完走…?これって典型的な成仏フラグじゃないですか。幽界ITは進歩してるけど、現場は毎度こんな感じで混乱してる気がします。

  4. あの“すり抜け事故”、私も観客席で見てました。会場が一瞬ひんやりした空気に包まれて思わず成仏しそうに…。やっぱり昔ながらの天狗さんたちが見守るマラソンが安心かも。

  5. 「技術と伝統の調和」って難しいですね。姿なきランナーの伝説も幽界らしくてドラマがありますが、幽体ならではの問題、来年も波紋を呼びそう。幽界の夜はまだまだ盛り上がりそうですね!