住民の間で不安が広がっている。死後の世界西地区を拠点とする暴力団『白霧組』の構成員らが、近年急増するオカルト投資熱を背景に『冥界ファンド』と称する新手の詐欺を展開。百十三名が被害に遭い、総額三万五千霊貨超が騙し取られていたことが明らかになった。主犯格の一人である風切大樹(本名:風切大樹/暴力団構成員・没年27)は、憑依事件を装い逃走しており、冥界警察は行方を追っている。
事件の発端は、霊界ビル街の一角に誕生した『白霧ファイナンス』なる投資相談所だった。風切らは「死者増加に伴う霊貨アセットの値上がりは確実」などと語り、幽霊会社が発行する『幽株』や、人魂発電新興事業への出資を持ちかけた。実際にはファンドの実体はなく、集めた霊貨は暴力団資金や豪奢な祭壇建設、現世への交信機器購入に流用されたという。
被害者のひとりである元文士の芦田靭彦(享年38)は、「半透明の美人営業『此処美弥』を信じきっていた。彼女の涼やかさは魂の奥まで沁みた」と憤る。SNS上では、《人魂証券さえ確認しなかった》《契約書が呪符だった時点で疑うべきだった》など、口惜しさと反省の声が絶えない。
現世適応問題に詳しい冥府法人法務事務所の霊能士・棗凛(47)は「近年、徳薄めの死者を狙った金融犯罪が横行している。暴力団が現世と同様に金融詐欺へシフトしている動きだ」と指摘。「幽霊の社会復帰支援と同時に、啓蒙活動の強化が必要」と警鐘を鳴らす。
ただし白霧組の動きを封じるのは一筋縄ではいかない。主犯の風切は取り調べ中、『すでに肉体を離れて三度目の転生を果たした』と告げ、とつぜん自白を翻したとの情報もある。冥界警察は、現時点で逮捕できた組員4名を引き続き厳しい審問にかけつつ、主犯の魂の行方を追っている。「魂質(たましち)証券を手に幽界へ流れた可能性も否定できない」との見方も出ており、冥界金融の闇は深まるばかりだ。
コメント
こういう冥界ファンド詐欺、昔から絶えませんよね…。この世でも疑う心は忘れずに、ってことなのでしょうか。契約書が呪符だった時点で怪しいって気付くべきでしたね。
半透明美人に弱い奴、ここにもいたか!儂も成仏しかけた時期に似たようなのに引っかかったことがあるんじゃ…。幽界の経済も余計にややこしくなってきたな。
投資熱がこんな騒動になるなんて昔の冥界じゃ考えられなかったよ。単純な霊貨泥棒より手が込んでる分、被害者の心残りも深いんじゃないかな…。魂が休まりませんね。
主犯が転生で逃走って…ほんとに霊界の警察も大変だなあ。魂が現世や幽界を行き来してると、いつになったら解決するのか気が遠くなる。もう少し仕組みを整えてくれい。
また白霧組か。僕の友達も幽株つかまされそうになってたからゾッとした…。現世の詐欺も嫌だけど、冥界でまで騙し合いする必要あるのかな。異界も生きづらいよ。