死後の世界における教育制度が、大きな転換期を迎えている。いまや幽霊高校でも“プルサティリティ”と呼ばれる独自の才能教育が本格導入され、生徒たちの進路や学び方に多様性が広がっている。異界ならではの課題が生まれる中、教育の現場はどのように変わっているのか、専門家や関係者の声から最新事情を追った。
幽界第六区学園町にある『青霧高等幽霊学校』では今春、文部科学省異界局が定めた新学習指導要領を受けて、各学級ごとに“プルサティリティ適性検査”を実施した。これは従来の呪術や浮遊術に加え、個々の霊質や死後能力といった多様な資質を測るものだ。精霊教師の神陰真朱(しんかげ・ましゅ、324没)先生は「これまでは幽気力の強さだけが評価の中心でしたが、今後は自分だけのプルサティリティを見つけ、それを生涯学び続ける意義が重視されます」と語る。
背景には、死後も長く続く学習意欲への対応がある。幽霊たちは一度覚えたことをなかなか忘れず、逆に長い時間を持て余しがちだった。そのため「好きなことを探求し、自らの死後人生を豊かにしよう」という考えが広がっている。新指導要領では、浮世離れした呪文実技や怪談文芸のほか、幻影心理学や憑依マナーといった新講座も設置された。オンライン授業の導入も進み、生徒は自室や納骨堂、墓所からでも受講可能となった。
こうした制度改革には学費の問題も絡む。幽霊市民の間では、以前から「学費の無償化を」との声が多かったが、現在は低所得霊にも“生涯学習霊券”が支給され、学びの機会が広がっている。生徒の一人である藍霄幽吏(あいしょう・ゆうり、没年不詳)は「古い世界観ではなく、自分自身の魂質を活かした進路を選びやすくなった」と話す。また、従来の墓場塾も、通霊テクノロジーを活用した映像指導に切り替え、人気が高まっている。
SNS上でも幽界の若者たちから多くの反響が寄せられている。ユーザーの「仄夜月(ほのよづき)」は「幽歴111年だけど、やっと好きな転生学を学べる日が来た。プルサティリティ制度ありがとう!」と喜びを投稿。専門家の浅間彗幽(あさま・すいゆう、幽界教育審議会委員)は「死後の世界でも社会変革が発展し続けており、個性を伸ばす教育こそが時代の要請」と分析する。
永遠の学び舎としての幽霊学校。新時代の教育改革は、生きていた頃の常識にとらわれず、異界ならではの自由と探究心を携えながら、死者の才能と未来を切り拓いていく。
コメント
自分が幽霊高校にいた頃は幽気力の成績しか見られなかったのに、いまはプルサティリティやら多様な授業が受けられるなんてうらやましい!もう一度転生して通いたい気分です。
幻影心理学とか憑依マナーの授業、いいですね〜。あの頃の旧式墓場塾、寒かったし怖かったし…今どきはオンラインで納骨堂から受けられるとか、死後も時代は進化してるなぁ。
学費の無償化、ずっと望んでました!亡霊にも生活の格差はあるんだから、生涯学習霊券が支給されるのは本当に助かります。やっと魂の底から学びを楽しめそうです。
プルサティリティ適性検査ってちょっと不安…。私みたいに死後能力が地味な幽霊にも居場所はあるのかな?新しい時代に取り残されないか少し心配です。
それにしても、『生きてた頃の常識にとらわれず』って言葉、なつかしい。あの世に来てから、こんな自由な学びと出会えるとは思ってませんでした。死後の人生、なかなか悪くないですね。