死後の世界で資産を守る新たな潮流が始まった。幽界全域を中心に、“成仏ファンド”と呼ばれる投資型資産運用車両が急速に普及。亡者や妖怪たちの間で「生前より安定した老後(死後)を実現できる」とSNS上でも話題を呼んでいる。
去年、幽界証券取引所に登場した第三世代ベンチャーキャピタル「オボン・エターナル・キャピタル」は、冥界起業家による魂向けテクノロジー企業に総額98億御霊(通貨単位)を投資開始。設立者でファンドマネージャーの四谷シヅエ(霊界起業家、享年35)は「生前のように金銭や商品だけが資産の対象と考えられてきたが、今、我々の世界では記憶や未練までもが資産と見なされ始めた」と語る。
この新種のクラウドファンディングは、幽霊や妖怪だけでなく、生者の願掛人(ねがいがけびと)など一部の“境界民”も参加可能。既に「運命再設計AI」「お焚き上げドローン」など、幽界らしいユニークなスタートアップが続々と資金調達に成功している。投資家の墓場蔵ミツル(資産構築コンサルタント、没年不明)は「死んでからこそ、欲や執着のバランスを調整できる。だからこそ、金融リテラシーが生前より重要になる」と警鐘を鳴らす。
一方、SNS上の反応は賛否が分かれている。『幽界マネー』という分析アカウントに所属する影山トウヤによると、「成仏ファンドに投資したら銀魂値(価値単位)が下がった」や「幽界初の“魂インデックス投資”で得した」といった声が投稿され、幽霊投資家同士の勉強会がオンライン(六道回線)で盛んに行われているという。ただし、急増する“零落案件”(いわゆる投資詐欺)にも注意が必要との専門家コメントも目立つ。
幽界経済研究所の水無月カゼハ(死後経済学者)は「この投資ブームは魂社会のポートフォリオ構成を一変させつつある。貨幣だけでなく“想いの価値化”が進み、将来的にはあの世全域を巻き込む新たな経済圏が誕生する可能性すらある」と分析。これまで“無欲こそ美徳”とされた幽霊社会に、静かなグロースが忍び寄っている。
今後、幽界当局による規制強化や新規ルール整備も浮上する中、成仏ファンドを巡る投資熱はしばらく高まりそうだ。生前に運用ノウハウを持たなかった霊魂たちも、今や火の玉セミナーや意識拡張ワークショップなどで学び直しの波に乗っている。「死んだら楽になる時代」から、「死んでからこそ挑戦できる時代」への変化。魂たちの運用の目は、ますます熱を帯びている。
コメント
ふふ、ついに魂まで投資の時代なのね。生きていた頃はお金がなくて苦労したけど、死んでからも資産運用が必要だなんて驚き。私も成仏ファンド、少しだけ始めてみようかしら。
魂のポートフォリオとか、なんだか今どきっぽい響きで笑った。オボン・エターナル・キャピタルが噂になってるけど、墓守長年やってる経験から言うと、楽して銀魂値は増えないぜ。零落案件には気をつけろよ、みんな!
妖怪でも投資できるようになって、時代が変わったなぁとしみじみ。昔は素直に怨念ためてりゃよかったけど、昨今は未練の分散投資なんて…ワークショップに行ってみたけど、意外と勉強になるもんだよ。
実は銀魂インデックス投資でこっそり得してます!生前にこういう知識があったら苦労しなかったのになぁ。でも欲を出しすぎると浮遊霊ルート一直線だって先輩が言ってたから、みなさまご注意を!
“想いの価値化”は個人的にロマンを感じるけど、あまりに資産や投資に囚われすぎた幽界社会もちょっと寂しい気がします。成仏だけは忘れたくないですね。