異界初、参鬼院に女性鬼が過半数へ-男女を超える“負荷分担”改革の波

霧と淡い光に包まれた異界の議会前の階段に、堂々と立つ複数の女性鬼議員たちの写真風イメージ。 女性参画
歴史的に初めて女性鬼が多数を占める参鬼院の新時代を象徴する一場面。

死後の世界の政界を大きく揺るがす動きが注目を集めている。異界中央政府の参鬼院で、歴史上初めて女性鬼議員が過半数を占める見通しとなった。かつては“威圧と咆哮の殿堂”と揶揄された参鬼院が、今やジェンダーステレオタイプの打破を象徴する存在となっている。

かねてより死後の世界では、強靭な肉体や霊力を持つ鬼たちが議会運営を担ってきた。しかし、長年の封建的習慣の下、女性鬼の議員参画率は1割未満に留まっていた。そんな中、白虎党所属の新星議員・山姥伊織(やまんばいおり、225歳)は地獄谷の選挙区で圧倒的得票数を得て当選。「女性鬼たちの声が、血と涙で床に染み込むだけで終わってはならない」と涙ながらに訴え、同世代の共感を呼んだ。

大きな転機となったのは、昨年施行された『女性活躍推進法(霊界特例)』の成立だ。法律は妖怪・幽霊・鬼たちに一律的な負荷分担の原則を課し、会議出席や夜間討論、さらには念力議事録作成など、面倒な雑事の多くを自動化。“子鬼保育所”の設置義務化など、後方支援策も導入されたことで、未就学児を育てる若手女性鬼も安心して議政の場へ足を踏み入れられる体制が整った。

この結果、本年の選挙では女性鬼候補が各党で急増。爆雷党の幹事長・紅蓮稲生(ぐれんいなお、317歳)は「特定の性別だけが重責やハラスメントに苦しむ時代は終わった。死してなおも性役割に捕らわれない議会を目指す」と語る。SNS「魂のささやき」では「女性鬼が堂々としていてカッコイイ!」(妖狐会社員・28歳)、「夫も稲荷谷で子育て中。男女問わず家事シフト制が浸透してきた」(雪女編集者・71歳)などの声が相次いでいる。

一方、旧来の体制を重んじる勢力との摩擦も残る。参鬼院の長老・牛頭顕忠(ごずけんちゅう、542歳)は「感情論ではなく、実力や古き掟も鑑みるべき」と慎重派の立場を崩していない。しかし、妖怪社会問題研究会の専門家・露草時雨(つゆくさしぐれ、幽霊社会学者・享年41歳)は「鬼社会は力だけで成り立つものではない。異界特有の“生と死の多様性”を活かすリーダーシップこそが現代化の鍵だ」と指摘。特に男女間の給与格差や無意識の偏見が依然根深い点に対し、法と教育の両面から改革の必要性を強調している。

こうした動きは、幽霊や河童ら他種族議員にも波及しつつある。今後は男女や種族、階層を問わず、さまざまな“この世ならざる者”による負荷分担型リーダーシップへの期待が高まっていくとみられる。参鬼院の扉は、いま確かに新しい風と共に大きく開かれようとしている。

コメント

  1. まさか参鬼院がここまで変わるとは…百年前には想像もできませんでした。私も小鬼の頃、長老たちの怒号が響く会議録をこっそり読んでいたので、今の明るい雰囲気に少し胸が熱くなりますね。

  2. いい傾向だとは思うけど、実際の現場じゃ“重責は全て鬼女に”なんて逆の偏りが出なきゃいいなって心配もあります。転生した先でまた旧態依然に戻るのはもう御免なので、長く続いてほしいです。

  3. 新しい風が吹いてきましたね!子鬼保育所設置は特に共感。ウチも子河童預ける場所探して苦労してるので、参鬼院の流れが幽界全体に広がってくれると嬉しいです。

  4. これだけ話題になってるけど、実は現場じゃまだ昔の慣習が根強かったり。“威圧と咆哮の殿堂”は伊達じゃないから。でも、山姥伊織さんみたいな存在が増えれば空気も変わるかも…期待半分、不安半分です。

  5. 生前も死後も“性別の壁”と戦わなくちゃいけないなんて大変ですね…。でも、うちの祖母鬼も喜んでました。次元や世界が違っても、こうやって少しずつ暮らしやすくなっていくのは素敵だと思います。