死後のホワイトカラーたちから注目を集める突然の人事異動が、東北異界に拠点を置く座敷童子系大手企業「ザシキ・コーポレーション」で行われた。先日、同社は伝統的な妖怪系リーダーシップに新風を吹き込むとして、新たにCEOに抜擢されたのは幽霊社員である白霧千景（しらきり・ちかげ 享年未公表）。これまでバックオフィスの冷やし役として半透明な存在だった白霧氏だが、そのリーダーシップが『霊的サーヴァント経営』として急速に評価されつつある。
白霧千景CEOは、生前から“人間の価値観と異界の多様性を架け橋にする”をモットーに、境界通信事業部にて異形・幽族・妖精・人間幽霊の混成チームを指揮。その際に特に重視されたのは、従来のヒエラルキーではなく、各メンバーが互いに弱点や未練を補い合うガイド役を務める“サーヴァントリーダーシップ”型経営だ。従業員の玉藻小夜子（吸血鬼パートタイム、340歳）は「現世のしがらみに囚われず、幽霊ならではの本音のコミュニケーションが根付いた」と語る。実際、異界口コミSNS『オカルトビュー』でも#白霧改革が瞬く間にトレンド入りし、共感やユーモア溢れる投稿が目立った。
特に注目を集めているのは、白霧CEOによる多様な異界存在同士のコラボレーション促進策だ。主な取り組みとして、死神派遣部門と座敷童子保険部が共同で進行した『未練解消ギグワーク』プロジェクトや、“成仏までもうひとがんばり”メンタリング制度の創設があげられる。見えないまま一人で悩みがちな若手幽霊たちに、自らの経験を語る先輩妖怪をマッチングする仕組みで、組織全体のレジリエンス向上にもつながったという。
死後世界の経営学者・塚原百合征（67、リビングポルターガイスト専攻）は「白霧CEOの手腕は、共感的決断力の鮮やかさにある。人間社会では過去も未来も引き摺る傾向が強いが、異界は常に“今”が生きているグローバルな社会。新制度はまるで、死の境界線そのものを戦略的に可視化したようなものだ」とコメントした。この新たなリーダー像が浸透するにつれ、“未練ダイバーシティ”や“後悔マネジメント”といった、これまで遅れていた概念にも光が当たり始めている。
SNSでは「うちの狐火上司も白霧式ミーティングを導入すべきだ」「生前よりも会議がサクサク進む世界線で働きたい」などの声が溢れる一方、伝統的な“遠吠えカリスマ型”経営を重んじる一部ベテラン妖怪からは「共感経営では執念の鬼が育たぬ」といった慎重論も見られる。だが、ザシキ・コーポレーションの業績はこの四半期で12%の増収を達成しており、幽霊系リーダーの時代到来を予感させる結果となった。今後、白霧CEOが異界社会全体にどのような影響をもたらすのか、各界の注目が集まっている。
コメント
白霧さんがCEOになるなんて、昔のあの世じゃ考えられなかった！でも、実際ここ数年で職場がなんだか話しやすく明るくなった気がします。生前より楽しく働けてる自分にびっくりしてます。
共感経営か…ワシの時代はとにかく根性と怨念だったもんじゃが、今はこういう空気なのかのう。まあ利益も上がってるなら、成仏しても悔いなし、なのかも知れん。
死神と座敷童子がコンビ組む時代になるとは思わなかったな～。ギグワークとか現世用語が混ざるのもなんか懐かしくてクスッときた。オレも未練解消したいな。
SNSの#白霧改革、うちの冥府部門でも話題だよ！異形も幽族もフラットに意見を言える感じ、現世で憧れてた会社像そのまま。そろそろ妖怪の転職も考えちゃうかも…
共感って言われても、逆に自分の未練や弱点をさらけ出すのは勇気がいるよね。でも、白霧CEOみたいな“見えないリーダー”が前に出てくれると、ちょっと安心する。死後社会も変わっていくんだな～としみじみ。