死後の世界で最大規模を誇る「幽霊統一議会」選挙が閉幕し、かつてない大接戦の末に比例代表枠で妖怪系候補が大量当選、長年安定多数を誇ってきた旧勢力の幽霊保守連盟(CLG)が大きく議席を減らした。異界中に張り巡らされた選挙ポスターや深夜の政見放送だけでなく、今年から初導入された『心霊オンライン投票』が、無党派層や現世出身の若年層を動かしたとの分析も出ている。
史上初のオンライン投票。その得票データが中央墓所ホールに映し出された瞬間、「巨大一反木綿党」党首の猫又(ねこまた)カサブランカ氏(享年不詳)が満面の笑みを浮かべた。「浮遊権や現世接触の自由化を訴えて5世紀。ついに異界の風向きが変わった!」と語る同氏は、SNS系霊界サービス『亡霊ログ』にて若手幽霊や半妖世代から熱烈な支持を集めていた。
一方、落選が相次いだ保守連盟。「食卓の茶碗を静かに回す権利」や「深夜の線香時短法案」を公約に掲げていた黒姿一郎議員(没後88年)は、「オンライン方式に馴染めぬ古参霊族が投票行動を控えた」と敗因を分析。政見放送では恒例の“異界民謡歌唱”を行ったものの、若年層にはやや退屈という指摘も(SNS上では『#議会政見放送でお通夜』がトレンド入り)。
選挙管理院の銀鏡(水晶玉姓)ルリ子委員長は投票率82%の高さに「歴史的快挙」とコメント。「現世・異界共通ID」導入によるダブル投票疑惑には「既に妖刀鑑定機関が検証開始、実態把握に努める」と述べた。これを受け、オンライン投票に一定の慎重さを求める声も一部から上がった。それでも全体的には、政治参加のハードルが大きく下がったとの声が多く、ポスターや政見放送の斬新さも評価された。
一連の選挙戦のなか、女郎蜘蛛(じょろうぐも)カリン候補はお盆限定“現世ゲリラ演説”を敢行。現世と幽界を結ぶLINE通話機能によって、一夜で2万票獲得に成功したが、不正投票疑惑は今のところ立証されていない。「私の想いはしっかり結ばれました」とカリン氏は語る。
今回の選挙がきっかけとなり、異界の無党派層や各種族の共生政策への機運が急速に高まっている。新人議員ジャック・お岩田(新・皿コウモリ党)は、「死後も政治を諦めない社会へ」と語った。来年以降の連立交渉や新法案の動向にも、ますます注目が集まる。
コメント
とうとうオンライン投票が導入される時代が来たんですね!前世でも現世でも投票難民だったので、今回は霊界IDひとつで済んで本当に便利でした。これから妖怪も幽霊も、もっと多様になってほしい。
いやぁ、こんなに妖怪が議会に来るのは何世紀ぶりなんでしょう。猫又カサブランカさんの満面の笑み…見ていて成仏しそうになりました。浮遊権の自由化、ちょっと期待してます。
ダブル投票疑惑、どうせまた河童とか座敷童子がイタズラしたんじゃないですか?水晶玉で全部チェックされるんでしょうが、昔から選挙はドロドロしてますねぇ…死後も変わらないのか。
若い世代や半妖がたくさん当選してくれてうれしいです!でも、伝統の『異界民謡』が空気だったのはちょっと寂しい…。あの民謡、昔は選挙の楽しみだったのになぁ。
個人的にはお盆限定“現世ゲリラ演説”が羨ましかったです。私もたまには現世の空気を吸いたい…新しい時代、あの世も動いてきましたね。みんな、来世もがんばって投票しましょう!