死後も終わらぬ営業の戦い――。幽霊や妖怪が働く異界企業間で、かつてない“新規開拓ブーム”が巻き起こっている。成仏物流や霊感カフェをはじめとした主要B2B企業が新しい顧客層の獲得にしのぎを削り、生前からの“成績優秀者”幽霊たちが次々と異動・引き抜きに動いているという。
「新規リード獲得数が去年比で2倍、今月は既に800件突破です」。こう語るのは、成仏物流の営業部長・夜霧眞弥（よぎり まや／享年42）。本人は平安時代に事故死後、今世で三度目の営業マン稼業。「三途川左岸の新興企業向け配送パック」や、「怨霊向け即日配送」など、新サービス開拓の先頭に立つ。夜霧氏は「怖がられない“営業スマイル”が苦労の種」と語る一方、「生前の経験が役立つ」と手応えを口にした。
こうした風潮は、異界ビジネス界のトレンドも大きく変えつつある。死神市金融センターのシンクタンク“アストラル総合研究”主任研究員の白峰灯（しらみね あかり）は、「成仏後も経済意欲が旺盛な層が増加中。幽霊営業担当者によるリード発掘は、企業寿命を500年単位に延ばす」と分析。近年は禁呪技術や現世との通信事業を展開する新興ベンチャー“ワカタツインク”なども急速に顧客数を伸ばしている。
SNS上でも、幽霊営業マンたちの活躍が話題に。「#死後の新規開拓」「#三途川越え営業」「#怨霊インサイドセールス」等のタグが多数投稿されており、「ブラック企業の転生は避けたい」「無限残業になりませんように」など、生前長時間労働に悩んだ者たちからの悲喜こもごもな声が寄せられている。実際、最近は“沼底ワークライフバランス研修”など、過労による“二度目の消失”を防ぐ企業研修も盛んだ。
一方、異界ならではの課題も浮上する。取材した霊感カフェの営業担当・蒼藤ほたる（そうとう ほたる／享年28）は「新人は現世への営業電話でよく誤送信してしまう」と嘆きつつ、「死後くらいノルマのない世界が理想」と苦笑い。だが、『現世でも異界でも、顧客の心を掴むのは誠意です』（夜霧氏）の言葉に、幽霊たちの営業魂に終わりがないことを感じさせる。新たなマーケットが広がる死後の世界に、今後も注目が集まりそうだ。
コメント
三番目の転生でも営業やってる夜霧さん、魂のプロ根性ですね…！私の前世も成仏物流だったのでなんだか懐かしい気持ちになりました。だけどさすがに無限残業はご勘弁…沼底研修、参加しようかな。
成仏後まで新規獲得競争とか、ちょっと気の毒にも思っちゃいます。でも怨霊向け即日配送は便利そうで笑ってしまいました。生前みたいに焦らなくていいはずなのに、やっぱりこの界隈の商魂はすごいですね。
死後の世界の企業寿命が500年単位って、やっぱりこっちならではのスケール感…！ブラック企業の転生だけは絶対に避けたいです（8度目の転生経験より）
現世に間違って営業電話をかけちゃう気持ち、分かります〜。ノルマのない異界が理想だけど、やっぱり誠意が一番って言葉にはちょっとほっこり。幽霊でもやっぱり働くことからは逃れられませんね。
異界ベンチャーの台頭…最近ほんと増えましたよね。三途川左岸配送パックとかサービスも進化してて、昔みたいにぼんやりしていられなくなったなと感じます。次はどんな商売が生まれるのか、ちょっとワクワクしてます。