エコロジー意識の高まりを受け、青沼郡の妖怪自治会が住民向けにユニークなエコバッグ運動を開始した。人間界でも馴染み深いマイバッグ活動だが、こちらでは“伸びる手”を模した自家製バッグや、半透明素材など、この世の住人には馴染みの薄いアイテムが注目を集めている。
青沼郡の妖怪自治会は、毎週水曜朝の市場でビニール袋の無償提供を廃止し、代わりに公式エコバッグを配布する政策を導入した。自治会長の九頭竜真一郎(くずりゅう しんいちろう/347歳)は「異界の森が年々やせ細っている。本来、われわれは自然とのバランスの上に棲息する存在。取り戻すべきは“昔の自然と共存する暮らし”です」と語る。新たなエコバッグには、伸縮自在の触手をイメージした持ち手が採用され、一部の若年層の幽霊に“映える”として話題となっている。
協賛する幽界エネルギー管理局では、市場上部に取り付けた大小30基の太陽光発電板から、発電エネルギーを直接市場の照明や電子計量器に供給。従来、魔力発電に頼っていた市場だが、この新システムにより余剰エネルギーを妖花の養殖所や霊道案内看板、ゴミ冷却所へと再分配することが可能となった。「昼は地上の陽光を、夜は下界の月光を吸収し、二重の恩恵を得られます」と技術主任の影山響(かげやま ひびき/同237歳)は胸を張る。
また、森林保護区の拡大策として、市内の“迷い林”で廃タイヤ精たちによる再生植林が進む。地縛霊ボランティア団体「緑の鎖」は『妖樹1本につきエコポイント5点』という新制度を導入、居住登録者には貯まったポイントに応じてエコ車の乗車券や霊界交通管理局の“風の馬車”割引券を発行している。近年、従来型のポルターガイスト運搬車が騒音や霊気排出量の高さで問題視されていたが、エコ車は『快適で静か、しかも燃費が“魂10個分”で済む』と評判だ。
教育現場でも変化が進む。青沼小学校では昨年度から環境教育の必修化を実施。校庭内にミニ太陽光パネルを設置し、妖精教師・葉山灯子(はやま とうこ/120歳)は「エコバッグの由来や太陽光発電の仕組みを教材に応用し、児童たちと一緒に未来の異界を考える授業を進めています」と話す。SNS上には『あの世の方がSDGsを地でいってる』『使い捨て袋の呪いを解く運動カッコイイ!』など称賛の投稿が相次ぐ。
一方で、高齢の大入道や無口な幽鬼層を中心に「羽織や帯にもフィットしづらい」「半透明すぎて何を入れても見られてしまう」など従来からの声もある。だが新生・青沼の試みは、異界全体の環境意識に確かな一石を投じ始めているようだ。
コメント
おお、これぞ新しきエコの波!わしらの時代は大入道が手を伸ばして荷物持ってくれたもんじゃが、エコバッグがここまで進化するとはな。幽界の若い者たち、よくぞ工夫した。
半透明素材とは、現世ではなかなか見ないアイデアですね。みんなが何持ってるのか丸見えで少し照れくさいけど、妖怪同士なら気にしないのかな?人間界にも分けてほしいです。
地縛霊のみなさんの植林、懐かしいあの森の記憶が蘇ってほろりとします。魂10個分で走るエコ車、昔だったら考えられなかった!異界も変わってきてますね。
妖怪自治会、なにやら張り切ってるな……だがエコポイントで“風の馬車”割引とか、あの世らしい特典でちょっと笑ってしまった。昔のモクモク魔力発電が懐かしいぜ。
青沼小の環境授業、すてきですね。子供たちが霊界の未来を考えてるなんて感動です。うちの分家墓地でもぜひやってほしい!次は使い捨て供花の削減運動とかどうでしょう?