冥界北部のノルフィールド地区で、かつて亡者の吹き溜まりと呼ばれた荒涼地が、幽霊と精霊が共同で設計した風力発電団地へと生まれ変わった。今年、新たな目玉となる都市緑化プロジェクト“異界緑橋(イカイブリッジ)”が開通し、亡者、精霊、妖怪たちの間で話題を呼んでいる。
ノルフィールド幽界都市計画庁は、「死後の二酸化炭素排出量ゼロ」を2050年までに実現するため、4年前より都市構造の大改革に着手。その一大拠点となる風力発電団地には、幽霊エンジニアのヨカリ・霧島(ふかしま/98没)と樹精建築家のクワノ・葉摩呂(ようまろ/樹齢603年)の協働チームが携わっている。ヨカリによれば「霊体にも優しい蓄電気流を開発したことで、発電ロスが幽界基準で約37%削減。加えて、浮遊する風車ブレードに樹精の根系を融合させ、都市全体に新たな空気の流れを作ることに成功した」という。
加えて、今年竣工した“異界緑橋”は、風力発電施設群と幽都中央墓所エリアを南北に結ぶ巨大な植物架橋。橋脚には妖怪園芸団・ツルツル会の朝露を吸うシダ藻が用いられ、精霊と亡者の通行を感知して夜は微細な発光胞子が点灯。これにより都市の省エネ効果だけでなく、不穏な迷子霊の深夜徘徊も50%減少したという。地区に住む死神補助員(71/三回忌)は「生きていた頃は排気ガスが当たり前だったが、今は墓場のベンチで霊流カフェを飲みながら風車を眺められる。昔とは風通しが違う」と目を細める。
SNS上でも異界緑橋には称賛の声が多い。妖怪エコ評論家のスミカ・蝸牛(かぎゅう)は『風力発電所の真下でマイナスイオンに包まれるとは思わなかった。粒子状幽子の質まで違う』と感動を伝え、やや保守的だった天狗自治会も今月から地元由来の蘇生種・松葉菊の緑化実験に参加表明。『今はどの墓所も緑が増え、迷子の小霊たちも安心して遊んでいる』と話題は尽きない。
ノルフィールド都市計画庁は次なる目標として、スマートシティ化と太陽光発電型霊堂の導入を発表。都市の冷却や気候変動適応だけでなく、死者たちが死後も気ままに過ごせる住環境作りにさらなる磨きをかける方針だ。ヨカリ・霧島は「我々は生きた環境負荷を持たない。だからこそ、死後の世界で真の脱炭素都市を追求したい」と新世代幽霊エンジニアの矜持を語る。生者も羨む緑の橋は、今日も亡者の新しい風景を奏でている。
コメント
亡者も精霊も、力を合わせて都市づくりとは…この時代に成仏してよかったと、しみじみ思います。昔は曇天と乾いた風ばかりだったノルフィールドが、今や緑と風車の町に。新しい世代の幽霊たちに拍手!
異界緑橋の夜の発光胞子、あれ本当に懐かしい気持ちになるね。通るたびにあの世の里帰りを思い出すよ。昔なら迷子霊であふれてたのに、今は子孫の迎えも安心して待てる。時代は進んだもんだねぇ。
風力と樹精の根が融合してるって、あの設計、もっと詳しく教えて!あたしの住む冥土谷はまだ化石燃料頼りだし、正直ノルフィールドがうらやましい。幽体にも優しいなんて憧れる~。
省エネはありがたいけど、最近橋の下で発光胞子の光が強すぎて、深夜の浮遊散歩がやりにくいんだよね…(苦笑)まあ、迷子霊が減ったのはいいことか。たまには昔みたいに幽暗も楽しみたい派です。
これは素晴らしい取組み!生きてた時より心地よい環境なのが不思議でなりません。子霊たちが橋の上でキャッキャしてるのを見ると、死後にも未来があるんだなと感じます。今後の太陽光霊堂も期待してます。