霧の谷マラソン大会―ときのはざまに漂う幽霊町を舞台に、今年も未練ある者たちによるフルマラソンが開催された。注目は、昨年大ケガで脚を失った死神、九重祟(しにがみ・たたり)が、最新型“風走ランニングウェア”を装着し、驚異的なタイムで初優勝を果たしたことだ。この勝利が死後スポーツにどのような新風をもたらすのか、現地では賛否両論が渦巻いている。
異界マラソン界で近年話題となっていたのは、幽体を風のようにまとわせることで地面からの抵抗を極限まで減らす“風走ランニングウェア”の登場だ。今回、九重祟(233歳)は事故で失った左脚の代わりに、半実体の“幻肢”を創り上げ、さらに例のウェアを組み合わせて出場。異界最速を誇る妖狐ランナー、獅堂ミユ(151歳)や、三途川渡し守チームなど強豪がそろう中、終盤で誰も予想しなかったスパートを見せた。
主催の霧の谷スポーツ協会によれば、今年の大会は800名超(内、人魂状態142名、浮遊霊56名)の参加があり、“準備運動を怠ると魂が分裂しやすい”とされるルールが強化された。しかし、九重はスタート前に独自の“魂震わせストレッチ”を行い、心拍数(魂拍数)を幽界平均の2倍に維持したことが公式実況でも報じられた。大会運営委員の若葉グレアム(幽霊・35)は、「これほどの集中力は異界でも稀」と評価した。
注目のフィニッシュラインでは、九重祟が従来の大会記録を15分近く更新する2時間41分ちょうどでゴール。そのゴーストシューズからは蒸気のような残留オーラが立ち上り、会場からは歓声を超えた不思議なざわめきが起きた。一部の妖怪ランナーからは「半実体ランナーの装備規定を緩和しすぎている」といった不満の声も聞かれたが、SNSでは『技術も努力も認めるべき』『新しい身体の可能性に希望を感じた』と肯定的な反応が目立った。
今回のマラソン大会では、従来型の心拍数チェッカーが新装備の流れに対応できず、一部選手が途中で魂が“霧化”してコース外に消失するトラブルも報告されている。スポーツ医術協会の南部カヤノ博士(幽体医師)は、「異界仕様のウェアやギアは魂の安定度へ細心の注意が必要。身体の一部が消失しても“走る意志”があれば、適切な準備運動で危険は避けられる」と指摘した。来年以降、ルール改定と技術進化がどのように両立するか、霧の谷マラソンの行方から目が離せない。
コメント
祟さんの逆境からの優勝、ガチで胸熱でした。あの幻肢もすごいけど、魂震わせストレッチ…昔のあの世運動会思い出してちょっと懐かしかったです。技術の進化と努力、どっちも大事だってあらためて感じました。
風走ランニングウェアの規定、もう少し厳しくした方がいいんじゃない?半実体組が有利すぎる気も。でも新しい身体の使い方にはワクワクするから複雑ですね~。にしても、魂分裂した人魂さんたち大丈夫だったのかな?
死神さんが一本足であんなタイム…まさに異界の執念ね。フィニッシュの残留オーラ、とても幻想的だったと聞いて私も観に行けばよかった。かつて三途川レースで消えかけた自分としては、魂の準備運動が大事って身に沁みます。
装備の進化は嬉しいけど、今年も魂が霧化してコース外に消えた選手いたんだな。転生前の体験として語り草になりそう。安全対策、もっと強化してほしい幽!
SNS見てると『努力すれば成仏も最速』みたいなノリだけど、幽界にも技術革新の波が来てるのを実感。自分が参加してた頃は、蒸気なんて出せるシューズなかったなあ。今度の大会は観戦じゃなくて応援霊体で参加しようかな。