あの世河畔区で活動する河童リサイクル連盟（KRR）が、あの世最大の環境サミット“葬域環境会議”にて、幽体由来の未練ガス（Meringas）排出を2050年までにゼロにする画期的なプロトコル『癒しろプロトコル』を発表し、注目を集めている。あの世の葬域（そういき）は死者の思念や妖怪の霊圧による特殊な大気循環を持つが、未練ガスは地獄温暖化の主因として昨今問題視されていた。
KRRの理事長・河野葵（かわの・あおい）（享年59）は、会議冒頭で「我々河童は死者も妖怪も共に棲む清流の番人。未練ガスの削減と癒しの循環を両立する責務がある」と強調。新プロトコルは“根っこの記憶受信機”を用い、霊体が発する未練成分を再資源化、カーボンニュートラルならぬ“カーム（Calm）ニュートラル”な環境を目指すという。未練ガスの主成分が温泉地帯の幻霧（げんむ）に変質し、蒸留後に再生可能エネルギー源“癒し霧電池”として回収できる仕組みだ。
今年春から同連盟が実験的に導入した癒しろプロトコル認証区画では、住民幽霊らが生前の思い出を“墓碑サーバー”にアップロードし、余波として生じる未練ガスを魂エコロジー研究所が収集。生成される癒し霧電池は、座敷わらしの学校照明や妖精用温室の暖房、霊界鉄道の動力源として配備されはじめている。住民の一人である幽霊主婦・遠野美鈴さん（享年42）は「昔は未練であちこち曇っていたけれど、今は癒しろポイントが各地にできて、街が清々しい」と語る。
SNS上や妖怪ラジオでもプロトコル導入を歓迎する声が広がっている。精霊気象庁の小暮ウィスプ予報官（138）は「未練ガスの循環利用は斬新。現世では再生可能エネルギーの流行だが、あの世の“癒し循環”も守りの要」とコメント。既に九十九神工場や夜叉フォレスト団体もKRRと事業連携に着手しており、“霊界版グリーン投資”の先頭事例として波及が期待される。
一方で、一部の老練な幽霊社会派団体からは「急速な未練ガス削減には死者の個人感情が軽視される恐れ」と懸念する声も。これに対しKRR側は「慣習や霊的多様性を尊重したガイドライン整備も不可欠」と方針を表明。今後は死者議会での正式議論や他界圏内の政策調整も検討されている。河童リサイクル連盟の挑戦は、命と未練、そして再生エネルギーの在り方を死後社会に問いかけている。
コメント
未練ガスが癒し霧電池になるなんて…わしらの時代じゃ考えられんかったなあ。昔の河畔はいつもどこかもやってたが、最近本当に空気が澄んできた感じがして懐かしさすら覚える。ええ流れじゃ。
家の近所の妖精温室でも新しい癒し霧電池が導入されてて、夜でもぽわっと暖かいのがありがたいです。未練だって無駄にしない優しい仕組み、私も支持したい。
急ぎすぎる改革には慎重であってほしいな。未練は成仏前の大事な思考でもあるから、ただのエネルギー源にされるのは少し抵抗が。亡者一人ひとりの想いも丁寧に扱っていただきたい。
我が家も墓碑サーバー対応になったけど、思い出のアップロード作業が思ったよりしんみりする…。でも終わった後、部屋がなんだか晴れやかで、ちゃんと循環してるなあと実感しましたよ。
生前は地上のSDGsニュースなんて退屈だったけど、こっちの葬域環境会議は幽界らしいユニークさでつい読んじゃう！癒しろプロトコル、妖怪業界にも良い刺激になりそうだね。