魂の風が吹き抜ける緑の大地・幽界緑原にて、今年、前代未聞の取り組みが始まった。幽霊や精霊、さらには転生を果たした樹木魂(ジュモクダマ)までもが自発的に参加する「リワイルディング計画」だ。枯れた自然をよみがえらせ、死後環境の気候変動対策を目指す同計画は、あの世市民にも大きな波紋を広げている。
計画の中心となるのは植物学幽霊の湯葉根シズエ(享年94)。彼女が設立した“幽霊ボタニスト協会”は、過去100年に渡り不断の水質汚濁調査や自然災害の記録管理を行ってきた。近年の死後エネルギー消費増加や、精霊界の大気循環異常が続出するなか、霊的生物の生存環境の回復は急務となっていた。人語を話すコナラ精霊・ドクダミ四朗(328)は「このままでは春先の花魂流入が途絶え、魂循環そのものが危機に瀕する」と訴える。
リワイルディング計画の最大の特徴は、死後の世界ならではの“自発再生力”の活用だ。新たな保護区では、枯死した大樹魂自身がプロジェクトリーダーとなり、幽霊市民と共同で植生を復元する。具体的には、死神による『魂の雫還元作業』、妖怪の『影光り誘導法』など最新のエコ技術が導入されている。省エネルギーを意識した夜間活動の推進や、音波によるコミュニティ形成も注目の的だ。
しかし一方で、幽霊企業の利権介入やプラズマ廃液問題といった課題も浮上している。先日、環境教育活動家である河童谷トオル(水妖、55)が企画した“日暮れの復樹ワークショップ”に、中間管理職幽鬼の集団が押し寄せ、結果として一帯の地脈バランスが一時的不調に陥った。SNS上では「呪力の無駄遣い」「輪廻交通規制が甘い」といった意見が相次ぎ、波紋を呼んでいる。
専門家からは冷静な声もある。死後環境学者の浮世咲良(幽霊研究員、38)は「短期的には摩擦があるが、この挑戦が幽界自然文化をもう一段階高める契機になるのは間違いない」と分析。リワイルディング進行地域の動植物魂数は早くも微増傾向を見せており、多様な死者コミュニティが参加する新たな共生の芽が芽吹きつつある。魂のめぐる世界に、どんな生命循環が誕生するのか――今後も目が離せない。
コメント
転生するたびに荒れ果てていく緑原を見てきた身としては、やっと本格的な再生の動きが始まって嬉しいです。魂流がもっとなめらかになりますように!
死後の世界も、やっぱり昔と比べると色々と環境問題が出てきましたよね。賛成ですが、幽霊企業の黒い噂も心配…。浄化のための活動、応援しています!
春先の花魂の流入が減るとか、聞いてちょっと寂しくなりました。新しいリワイルディングにワクワクしつつ、昔の森の香りも時々恋しくなりますね。
影光り誘導法とか、最近のエコ技術にはビックリですな。自分がいたころは根性で自然再生してたのに、時代が進んだもんだ…。何でも呪力任せは危険だぞ〜。
みんなが魂のために協力する光景、とても素敵です。生前あれだけ自然を壊してしまった身として、せめて幽界では役に立ちたい。次は私も参加したいです!