地獄原野アリーナで行われたパラアーチェリー大会で、幽霊と妖怪が共に挑む新たな取り組みが幕を開けた。今季から正式導入された「透明伴走者制度」は、死後社会に暮らす障害を持つ住人たちに大きな希望と変化をもたらしている。
死後の世界では、逝去の事情や生前の障害がそのまま引き継がれることが多い。「成仏市パラスポーツ振興会」会長の銅鑼川ほのか(82没)は「亡くなった後こそ、心身の制約に捉われないスポーツの在り方こそが重要」と語る。今回、“透明伴走者制度”が採用されたのは、競技者の背後に実体を持たないガイドが、弦を張る指導や照準時の心の支援をする画期的な仕組みだ。現世の伴走者制度にならい、輪廻庁スポーツ局と幽霊ボランティア連盟が協働で調整を進めてきた。
先日の大会では、生前視覚障害があった射手・志奈原雲介さん(享年68)が、妖怪・百結び鞠女(ひゃくむすび まりめ)(外見年齢30前後)の“透明伴走者”とタッグを組み、会場を沸かせた。鞠女は弓の糸に意識共鳴を送り、雲介さんの耳元へのささやきで距離感と風向きを伝える独自技術を披露。「透明ガイドは最初こそ奇妙でしたが、今や鞠女さんの気配が心を落ち着かせてくれる」と雲介さんは語る。選手たちは伴走者の導きのもと、天の射場で鮮やかなピクトグラム的軌道を次々と描き出した。
スポーツボランティアの広がりも注目されている。成仏市の幽霊中学生(57没)・霞伊るみさんは「一度伴走ボランティアに参加したらスポーツの楽しさにも、いろんな霊との語らいにも目覚めました」と、ボランティア交流会の場で話してくれた。これまで肉体を持たぬ霊には物理的な介助は難しいとされてきたが、意識や存在の“同期”による心理的サポート、そして妖怪や精霊による特殊スキルの提供が、予想以上の成果を生み出している。
SNS「彼岸つぶやき」では、「新しい透明ピクトグラムで競技解説がわかりやすくなった」「伴走者との縁結びサービスが始まったらしい」といった呟きがひろがる。幽霊スポーツ心理士の伊吹音冴(45没)は「障害者と非障害者、現世生と幽界存在という分断を越え、『共にいる』ことの意味を、死後世界のスポーツが鮮やかに示している」と強調した。最新の透明伴走者制度は、天界・地獄・精霊界をまたいで真のインクルージョン文化を推進しそうだ。
コメント
透明伴走者なんて最初は本当に存在するのか不安でしたが、会場で観ていて心がほわっとしました。わたしも幽霊になってから身体がふわふわでスポーツから離れてたけど、こういう取り組みが日常になったらまた挑戦してみたくなりますね。
いやはや、死んでまでスポーツ界隈の進化があるとは…。正直、現世より多様性ある世界になってるんじゃ?透明ガイドのピクトグラムは、我々の目にはどう見えてるのか気になる。次回大会はぜひ、生も幽も一緒に盛り上がりましょうぞ。
実体がない者同士だからこそ、生前以上に“絆”を感じられるのかもしれませんね。私はかつて伴走サポートを断られた記憶があるので、こうして制約なく助けあえる時代が来たのは感慨深いです。幽界も捨てたものじゃありません。
透明伴走者制度、便利な半面、馴れ合いで勝敗がグレーにならないか少し心配。実体ない同士だと互いの思念が混ざり過ぎそうで。まあ、スポーツは魂同士の駆け引きだから、それでも良いのかも。
懐かしいなあ…生きてた頃にアーチェリーに手が届かなかった自分には、このインクルージョンの流れが少し羨ましくも感じます。雲介さんと鞠女さんのやりとり、来世でまたどこかで見たいな。