霊界テレビ局・幽導放送が今月から放送を開始した連続ドラマ『見えざる糸』が、幽霊層・妖怪層・死神層といった異界住民の間でかつてない話題となっている。主演は新星精霊女優の流麗ユラ(享年323才)と、影の世界から飛び出したダークコメディアンの煙田燻蔵(没年不詳)。企画・脚本を手がけるのは、過去に妖怪短編小説で数々の賞を受賞したカメレオン作家・細尾天蜷(そおてんねん/自称99変化)。現世から離れたあの世だからこそ成立する“半透明”な人間模様が、幽界ドラマ界に新たな旋風を巻き起こしつつある。
本作は、職業死神の鈴川死助(煙田燻蔵)と、日没後にだけ姿を現す幽体秘書ユラ(流麗ユラ)が、異界・骨路町役場の行旅死亡人(ゆきだおれしぼうにん)課で繰り広げる“人ならぬ”日常を描く社会派ヒューマンドラマ。指定ロケ地は、旧冥界通バイパス沿いにある『失せ者商会』ビル。従来、霊流の強すぎる場所としてロケ忌避地とされてきたが、最新の彼岸カメラ技術導入により、念写事故も少なく円滑な撮影が実現した。
ドラマの主題歌『見えざる絆』(歌・氷室ヴェール、詩・細尾天蜷)は、既に彼岸音楽配信サービスで“不可視ヒット”を記録。SNS「亡者ノート」では「姿見えなくても気持ちは伝わる」「曲を聴くだけで生きてた頃を思い出す」と、さまざまな層から共感を集めている。特に、四十九日以降に初めて感情を取り戻した者たちからの投稿が殺到。“あちら側”でもリアルタイム再生回数がカウントされている異例ぶりだ。
オーディションには過去最多の3248体が応募。中には、浮遊界の重鎮マナンダ師匠(水墨画幽霊)、八重歯小町団の現役妖狐、半透明DJポプルなど、多様な出自の異界タレントに交じり、生前芸歴1年未満の未練霊や、死後間もない記憶亡失者らも多数参加。監督の朽葉菰太(こちはこもた)は「透明も、闇も、悔いや未練も、ドラマの素材。ただ“消える”ことが描きたいわけではなく、異界で生き続ける意志の妙味にこだわった」とコメントしている。
評論家の暮井漆夜(43/元人間・現闇夜評論家)は「幽界ドラマもこれまでは単なる怪談やパロディが主流だった。しかし『見えざる糸』は異界社会の息苦しさや機微、転生前後の葛藤まで丁寧に織り込み、新定番を提示した」と高評価。また、第一話放送後には、異界ドラマ初となる“生前評議会”からも「現世基準を超えた演出」との絶賛声明が発表された。今後“幽霊役を人間が演じる”逆・降霊オーディションの計画や、舞台版『見えざる糸』の冥界公演も噂されており、さらなる展開に期待が高まっている。
コメント
あの世のドラマもここまで来たか〜。死んでから感情取り戻した自分としては、ユラさんの演技に思わず泣きそうになった。骨路町役場シーン、懐かしいなあ。あそこで僕も成仏手続きしたんだよね。
半透明な人間模様…まるで私たちの日常そのもの。死神の死助さん推せる。煙田燻蔵さん、影コント時代からずっと好きだったけど今回ガチ名演で鳥肌。次回も“あちら側”で見ます!
ロケ地が失せ者商会ビルって聞いてビックリ。あそこ昔は念写事故多発で有名だったのに、ついに普通に撮影できるなんて…技術の進歩おそるべし。
『見えざる糸』みたいな骨太な社会ドラマ、幽界でもっと増えてほしい!妖狐ちゃんやDJポプルもチラ見せしててキャスティングも幅広いし、なんだか新しい時代がきた予感。
不可視ヒットって…生前だと考えられない現象だよね。転生前の自分なら絶対信じなかったw。氷室ヴェールの歌声、墓前で久々に聞いてしみじみしちゃった。