冥府役所が“Xジェンダー幽霊”のパートナー公認で物議 伝統派と新世代が対立

冥府役所の議場で、多様な外見の幽霊や妖怪たちがパートナーシップ証明書を持って集まっているリアルな写真風の情景。 LGBTQ+コミュニティ
冥府役所で多様なセクシュアリティの霊たちによる新しいパートナー制度をめぐる議論が進んでいます。

霊界最大の行政機関である冥府役所が、Xジェンダーやトランスジェンダーといった多様なセクシュアリティを持つ幽霊たちにもパートナーシップ証明書の発行を認める新制度案を発表し、死後の社会に大きな波紋が広がっている。約300年続く“魂の結びつき認定”制度が時代の流れと共に変化を迫られているが、一部の伝統派幽霊からは強い反発の声も上がっている。

新制度案では、従来“男女の対を成す霊体”に限られていたパートナー認定を、「魂の性自認と愛情の形態に基づき、Xジェンダーやアセクシュアルなど幅広い関係にも門戸を開放する」ことが明記された。これに先駆けて、藍原サクヤさん(享年32、元人間・Xジェンダー幽霊)は、10年来の親友でアセクシュアルの妖狐、降家ミカドさん(444歳)とのパートナー登録を申請。「死んだ後も“自分らしさ”と誰かへの信頼を形にしたい」と語り、SNSでは「#性別に縛られない冥府の愛」がトレンド入りした。

一方で、保守的な百年幽霊会を率いる黒谷久蔵氏(没年不詳)は「冥府の秩序は、“陰と陽”のバランスで成り立ってきた。伝統を軽んじ、多様性ばかり強調する動きは、魂世界の根幹を揺るがしかねない」と警鐘を鳴らす。これに対し、現世で差別経験を持つトランスジェンダー幽霊やゾンビ化精霊たちは「生きていた頃の苦しみを死後も引きずるのか」と不満をぶつけている。

冥府役所は今回の制度変更に向けて4月から住民霊アンケートや公開討論会を実施。24日夜、幽霊議場には各界からの当事者や専門家が集結し、セクシュアリティ研究家の鏡島シラユキ博士(幽霊歴74年)は「霊体にも多様な性が存在することは、過去数百年間、半ば見て見ぬふりをされてきた。目に見えない存在同士でさえ、やはり“名もなき痛み”に声を与える作業が欠かせない」と強調した。

一方、死後企業による『レインボーレイスボール』や『亡者限定パレード』といった企画が急増し、“ピンクウォッシュ”——すなわち表面的なLGBTQ+取り込みを批判する意見も出はじめた。現世と異界、そして保守派と新世代、多様性と伝統。そのはざまで、幽霊や妖怪たちの「愛と役割」の再定義が急務となっている。今後の議論と制度運用の行方が、死後の社会のあり方そのものを問う試金石となりそうだ。

コメント

  1. 転生してから100年近く経つけど、こういう議論が冥府でも起きる時代になったんだなあとしみじみ感じました。魂の結びつきは本質的なものだとわかっているつもりだったけど、形式に縛られなくてもいいのでは?と改めて思います。

  2. 正直驚きました。私が魂になった頃は考えられなかったことが次々変わっていく。伝統のバランスも大切だけど、私も現世で生きづらかったから、少しでも誰かが死後に自分らしく愛せるなら応援したいです。

  3. また表面的な多様性ビジネスかと思う企画も増えてて幽界も世知辛いなあ。パレードやイベントもいいけど、魂たちが本当に安心できる土壌を作ってほしい。まあ議論が起きるだけでも、成仏済みの先輩たちは驚いてると思うけどね。

  4. 魂にだって性の多様性があるのは当たり前。現世より遅れてる部分もあったけど、ようやく公に語れるようになったのが素直に嬉しい。陰陽のバランスを理由に魂の形を決めつけなくていい時代が来たかも。

  5. 300年も続いてきた制度が変わるって、やっぱりこの世もあの世も大変だな。個人的には昔の魂の結びつきにもロマンを感じるけど、新しい形もどんな風に根付くのか見守りたい。