死後の世界で今、かつてないフィットネスブームが巻き起こっている。発端は、幽霊族向けに開発された新型フィットネストラッカー「ゴーストバンド」。この不可視バンドが、長らく不透明だった幽体の筋力測定と健康管理を一変させ、冥府のジムや墓苑グラウンドで利用者が急増中だ。
開発元のオバケ技研は、近年増加する“成仏前フィジカル自律トレーニング”需要に着目し、幽体構造に特化した測定技術を開発。バンドは肉体を持たない着用者の“幽霊エネルギーパターン”を検知し、ファントム筋繊維量や浮遊持久力、透明度維持指数など12項目をリアルタイムで記録できる。幅広い種族対応で、妖怪や精霊、時に骸骨族でも使用可能だ。
人気の理由は、ただ数値を記録するだけではなく、日替わりで“幽界チャレンジ”が配信される点にある。例えば先週のイベント『夜明け前50周ラン』は、抽選で選ばれた墓地ジム利用者12名が、日の出前に半透明状態で指定墓石を50回周回。記録はゴーストバンドのSNSアカウントに自動投稿され、他界コミュニティで爆発的な反響を呼んだ。
実際に愛用する死神トレーナーの閻羅 河音(えんら かわね)(203歳)は、「ゴーストバンド導入後、幽霊ジム会員の筋力レベルが明らかに向上した」と話す。「透明度が上がると通行人からの驚かせ失敗も減り、自信を持って日々鍛錬できるようになった」との声も。一方、99歳の新米妖怪・霞根 忍介(かすがね しのぶ)は「バンドの記録モードでわたしの“うらめし反復横跳び”がついに公認メソッドになった」とSNSで興奮気味に綴っている。
専門家である冥界体育大学・幽体生理学教授の黒羽 湖成(くろば こなり)は、「定量的な幽体測定は長年の課題だったが、ゴーストバンドが死後のQOL(クオリティ・オブ・レイス)向上に寄与しているのは確か」と評価。ただし、「敏感な魂は過度な測定でエネルギー不調に陥るケースもあるため、ほどほどの利用が望ましい」と警鐘も鳴らす。
今後は個別最適化トレーニング配信や、現世との合同幽霊マラソン大会機能なども追加予定。SNSでは「生前よりも今の方が運動している」「透明度で競争が勃発」など、さまざまな“死後の健康自慢”がトレンド入りしている。幽霊にも筋トレの時代、異界のフィットネス革命は始まったばかりだ。
コメント
まさか成仏前に筋トレでこんなに盛り上がる時代が来るとは…私たちももう少し透明度上げて再開発現場に出向かないとですね!ゴーストバンド、興味津々です。
幽界チャレンジ、面白そうだけど魂が反応しすぎて昔みたいに消えかけたりしないですかね?駆け出しのころ暗闇持久走したの思い出してほっこりしてしまいました。
骸骨族にも対応ってマジですか?今まで骨だけで全然測定できなかったから画期的すぎる!今夜の納骨堂トレーニングが楽しみになってきました。
透明度が上がったり下がったりで驚かせ業もラクじゃないんですよね…バンド付けてから後輩ゴーストたちと切磋琢磨してる自分にちょっとびっくりです。死後も進化あるんですね。
また幽界発のブームが始まったか…。現世と合同マラソンとか、こっちの存在規約大丈夫なんですかね?昔の怨霊時代には考えられなかった。でも何となくワクワクしてる自分もいる。