死後都市ヨミノクニの国会議員選挙に揺るがぬ疑念が浮上している。市内第三選挙区で立候補した妖怪議員・霞見玲一(かすみ・れいいち、幽体歴142年)が、選挙投票当日に姿をほぼ完全に消していたことから、“透明投票”疑惑が噴出。選挙管理委員会には有権者や対立陣営からの抗議が殺到し、異界中で波紋が広がっている。
話題となったのは、通常の“霊体認証”が義務付けられている投票所で、霞見候補の気配が全く検知されなかったという前代未聞の事態だ。当日、複数の有権者が「投票列で霞見議員を見かけた」「いや、椅子しか見えなかった」など証言が分かれ、SNSでは『#透明候補』『#消失議員』といったタグが話題となった。選挙区の選挙管理委員長・尾頭清哲(おかしら・きよあき、職歴312年)は、「予定通り投票所には入室記録があった」と説明するが、可視化カメラにも姿は映らず、識別霊波も感知できなかったという。
霞見候補側は記者会見で、「急な意識風化現象(AWE:Aggregate Withering Effect)が発生し、不本意ながら物質界との境界が極端に薄くなった。偶発的な現象であり、不正の意図はない」と強弁。また、「私にしか投票できなかった、という主張は事実無根」と釈明し、選対本部では“透明化政策”の見直しも検討するとした。だが、ライバルの土蜘蛛党・百々目鬼ちよ(どどめき・ちよ、妖怪族)は「姿を隠して投票を誘導するのは公職選挙法に反する」と批判。市内の墓地では抗議の“集団憑依パレード”まで起きた。
市民からは様々な声が上がっている。長命町在住の幽霊主婦(295)は「姿が見えなくても政策は見える」と冷静な見方を示す一方、若手妖怪層を中心に「あまりに透明すぎて共感できない」との不満も。選挙評論家の猪狩冥太(いかり・めいた)は「過去にも半透明候補の投票トラブルはあったが、ここまで徹底的な消失は異例。あの世社会の多様性と投票の公正性をどう両立させるか、国会全体に議論の波紋を呼ぶだろう」と語る。
選挙管理委員会は事態を重く見て、“幽体状態に応じた新型認証システム”の導入を急ぐほか、透明化技術の過剰使用を規制する見直し案を示唆。来月には全霊的存在を対象にした“投票ルール再確認セミナー”も実施する予定だ。選挙区再編や立候補条件の是正も視野に入る中、“消失議員”をめぐる騒動は死後社会に新たな一石を投じている。
コメント
まさか投票所でここまで完全な消失現象が起きるとは…!昔は半透明な人なんて珍しくなかったけど、やっぱり大規模選挙になると色々問題が出ますね。うちの曾祖母も驚いてました。
僕は逆に、物理的な姿が見えなくても投票自体は成立すると思ってましたけど…やっぱり霊波の認証が通らないのは大問題だよなあ。透明化って便利だけど、公正さが揺らぐのは困る。
墓地の集団憑依パレードが懐かしいです。私は前にも似たような騒動に巻き込まれて成仏し損ねたので、今度こそしっかり制度を見直してほしいです…投票は私たち成仏未遂層にとって大事な権利ですから。
透明化政策なんて言ってるけど、結局は好き勝手消えたり現れたりして議会が余計ややこしくなるだけでは?ちゃんと姿を保てる覚悟がないと議員は務まらないと思う。半分皮肉です。
時代が変わったなあ…私なんか生前は“姿が薄すぎて投票できない”ってよく言われて落ち込んでました。今は多様性の時代だけど、やっぱり皆が納得できる仕組みにしてほしいですね。