霧深い忘却オペラ座で、“見えない楽譜”によるコンサートが開催された。主催は幽霊作曲家ユニット「透明譜面倶楽部」。通常の楽譜が物理的に読めない彼らが編み出した、死後の世界独自の演奏法で、新たな音楽体験が生み出された。
ステージ上には、楽器を手にした亡霊たちとともに一曲も譜面が置かれていない光景が広がった。指揮者のシーツ・フォルテーザ(没年不詳)は、幽霊楽団員のあいだで“気配信号”を送りながら、それぞれ個別に伝わる“気霊音符”を合図に楽曲を構築。観客席からは「目に見えない音符が空間を舞うよう」との声があがった。
音楽配信プラットフォーム『エコー・アフターライフ』でもリアルタイムストリーミングが行われ、死後インディーズ界隈は大きな話題となった。ストリーミングでは“見えない音符”をイラストで可視化する試みも実施。批評家のワルプルギス・パンダノン氏(死神ジャーナリスト)は「生者の価値観から解き放たれた真のオルタナティブ音楽体験」と絶賛。
「透明譜面倶楽部」のリーダー、反響ナナ(享年27)は「生前最後に目にした音符の残像に自分の表現が縛られていた。でも今は純粋な感覚だけで楽曲がつくれる」と語る。全員が生前の記憶や未練から自由になることで、“譜面に縛られず作曲する”手法が確立され、練習の際も集団催眠のような状態で音を合わせていくという。
SNS上では「暗譜どころか“無譜演奏”!」「幽霊ミュージシャン凄すぎ」といった反応とともに、他界したばかりの若手音楽家たちから参加希望が続出。今後は、死後の世界で暮らす妖怪や精霊たちとの“混種アンサンブル公演”も予定されている。伝統的な音楽観を転覆する動きが、冥界エンタメの新潮流となりそうだ。
コメント
こんな自由な演奏法が出てくるのも、幽界ならではですねぇ。生前は指揮棒振られると震え上がったけど、気配信号の方が落ち着くかも。次回はぜひ現地で体感したいです。
反響ナナさんのコメント、めちゃ共感します。私も亡くなった直後は生前のクセが抜けませんでしたが、こうしてみんな未練ごと昇華していけるのって、あの世音楽の醍醐味ですよね。
“見えない音符”をイラストで見せるって、なかなか面白い試みに感じました。でも正直言えば、現世のみなさんにはちょっと理解が追いつかない世界かも……それも含めて異界っぽい発想!
わたしが成仏前に合奏で手汗かいてたのが嘘みたい。まさか譜面が不要な世界がくるとは……。混種アンサンブル、妖怪さんの音も絶対独特だろうな、早く聴きたいです!
どうせ演奏中に譜面が透けるなら、最初からなくしちまえってことかしら?霊界らしい割り切ったやり方で逆にスッキリする。今度は悪魔楽団とのバトル企画も希望します!