黄泉野原南部の閑静な区画で、“ポケットパーク”と呼ばれる極小公園が突如現れては消える騒動が続いている。主導するのは、迷い霊や妖怪庭師らで熱気高まる『幽霊庭師組合』。地元住民(故人)や精霊たちの間で賛否両論を呼ぶこの現象の裏には、死後社会特有の都市緑化、新たなランドスケープデザインへの挑戦があった。
今回組合が着手したポケットパークは、通常の霊界施設と異なり3夜ごとに姿形が変わる“流転式”だ。空中に浮かぶパーゴラには半透明の蔦が巻き付き、地面には現界から流れ着いた石英や自生ゴーストグラスによるロックガーデンが点在。訪れる度に水景が変化し、小川が突然逆流しては亡者の足元をくすぐる趣向も盛り込まれている。この新奇な景観づくりについて、『徘徊幽霊(42)』こと庭師歴21年のカゲノ・ヒカルさんは、「死後にも変化と驚きが必要。魂が沈みきらないよう、風通しの良い空間を増やしたかった」と話す。
注目点は、植栽のほとんどが黄泉在来種(ネイティブプランツ)で賄われている点にある。ゾンビモミジ、薄明ネズミモグサ、幽狐カズラなど、各界隈の古参精霊による推進運動で絶滅危惧種が復活。これにより、黄泉チョウや霊界ミツバチ集団の生息数も急増したとの報告がある。一方、迷子霊のアオタマ・サクラさん(没後3年)は「夜になると道が消えて彷徨う。楽しさもあるが、不安も強い」と苦言を呈する。
SNS上では『#消えるポケットパーク』がトレンド入りし、「冥界にカフェ付きの公園希望」「魂のリフレッシュに最高」など肯定的な声が多い。一方で、「足なし猫またが突然現れ、ネイティブプランツを捕食」「水路のミラージュ効果で幻覚を見る」と利用者同士の混乱も指摘された。幽霊庭師組合は「予期せぬ現象も地元カラーの一部」として維持方針を堅持する。
黄泉ランドスケープ協会の主任プランナー、ヒガン・タカシ氏(533)は、「霊界ローカルな景観が定着すれば転生希望者の足止め効果も見込める。今後は人間界にも逆輸入できるノウハウが生まれるだろう」と期待を述べる。死後社会でも“癒やし”と“サプライズ”を求める声は増加中――消えるポケットパーク現象は、魂たちの暮らしや価値観にどんな新風をもたらすのか、今後の展開に注目が集まっている。
コメント
ポケットパーク、三夜ごとに形が変わるなんて…まだ成仏できていない私でも、昔の花見を思い出してちょっと懐かしい気持ちになります。魂のリフレッシュ、すごく大事ですよね。
また道が消えたら迷い込みそうで正直ドキドキします(笑)。でも探検気分もあって、転生前よりアクティブな毎日かも。幽狐カズラも見てみたい~
猫またが出没して植物を食べちゃうのはちょっと困りものですね…。せっかくの絶滅危惧種、もっとしっかり守ってほしい派です。
私は幻覚水路のおかげで故郷の川を思い出しました。こんな不思議な仕掛けも死後ならでは。風通しの良い空間、もっと増えてほしいです!
転生希望者の足止め効果を狙うっていう発想、冥界らしくて笑いました。どうせなら人間界にも流転式パークを輸出してみてほしいですね。混乱もご愛嬌かな?