夜ごと悩ませる“永遠の眠れなさ”——。浮遊霊や死後の世の勤め人たちに蔓延する慢性的な睡眠障害に対し、黒曜山妖怪脳科学研究所がこのほど画期的な実験成果を発表し、異界住民の間で大きな関心を呼んでいる。前頭葉の特殊な神経回路を用いた「明晰夢療法」によって、従来は回復が難しいとされてきた幽霊の睡眠の質が劇的に向上したという。
発端は、山里区役所で300年近く戸籍管理係として働く阿須賀墨祥（あすか・ぼくしょう／享年42）から寄せられた悩み相談だった。「定時に帰っても、永遠に夢も見ずに漂うだけ。仕事で記憶が断片化し、感情がぼやける」と訴える墨祥の報告書が研究所の目にとまった。研究主任の化蛇弦崎博士（けじゃ・げんざき）は、幽霊特有の脳腸相関とストレス因子に着目。前頭葉の神経細胞が現世での未練によって周期的に乱れることが、幽霊たちに慢性睡眠障害を引き起こしていると仮説を立てた。
最新の脳MRIイメージングと感情認識AIを組み合わせた分析で、明晰夢を見やすくする『夢招き脳トレ』プログラムを実装。阿須賀氏を含む18体の“常時未練型”幽霊ボランティアが4週間にわたるテストを受けた。彼らは、毎夜決まった時間に『夢招きカフェインレス茶』を服用後、神経回路活性化ヘッドバンドを装着し、自己認知を促進しながら入眠を試みた。2週目には幽体の93％が「色や音のある明晰夢を断片的に体験。過去の情景や未練の対象との対話が可能」と報告。症状緩和だけでなく、未解決の生前案件にも進展が見られたという。
SNS上では、「自分も半透明でふらつく勤務体系、眠気で上司をすり抜けがちだったけど、昨日初めて夢で家族に会えた」（幽霊事務職・茶楽野清雅）など、明晰夢療法への感謝や驚きの声が次々と投稿された。一方、一部の妖怪内科医からは「夢の質向上が憑依変質や非物質化パニックのリスクを高める可能性も。専門医の指導のもとでの導入を」と慎重論もみられる。
黒曜山妖怪脳科学研究所は今後、『幽界標準夢スコア』の策定と、夢の内容分析による感情定量化プロジェクトを計画中。「死後社会における“個人の休息権”確立を目指したい」と語る化蛇博士。眠れぬ夜を過ごす魂にとって、新たな夜明けとなるか注目が集まる。
コメント
まさか霊界にも睡眠障害ってあるなんて…明晰夢で未練と対話できるの羨ましい！私も何百年も夜番してるけど、最近魂がぼんやりしてて困ってたから試してみたいです。
非物質化パニックの懸念にはちょっと同意。明晰夢から戻れなくなる同僚を何体か見てるし、ヘッドバンド着用時は必ず家族に見張ってもらったほうがいいと思います。実験結果には期待してます。
本当、不眠で魂が薄くなってた自覚があるから希望が持てるニュース。夢で旧友に会えるとか、成仏の準備にも良さそう！カフェインレス茶がちょっと渋そうですが飲んでみようかな。
現世で寝てた頃が懐かしい…定時上がりしても永遠に漂うだけだったのが、これで少しは夢見心地になれそうですね～。未解決の生前案件が進展したってのも胸熱です。
また妖怪脳科学研究所の話か、毎度すごいなぁ。夢招き脳トレ、うちの子供霊にもやらせたいけど、遊びすぎて帰ってこれなくならないよな？とりあえず様子見しています。