山間にひっそりと広がる異界の自然公園、サヤナ深林地帯で、毎年恒例となった『ファントムキャンプフェスティバル』が先週末に開催され、多様な幽霊や妖怪たち約700体が参加した。だが今年、来場者の間で“影パトロール”隊と名乗る新勢力によるリュックサック検査や、焚き火ナイフの持ち込み制限を巡る小競り合いが発生し、会場は一時混乱に包まれた。
サヤナ深林のキャンプフェスティバルは、死者や半透明の精霊たちが思い思いの休日を過ごす場として、19世紀から続く伝統行事だ。今年は時空の歪みで木々が唐突に沸騰したり、雷鬼の焚き火ナイフ競技会が過熱するなど、例年以上の熱気を帯びていた。しかし、午前3時頃から突如現れた“影パトロール”隊が、「不法に生命の香りを持ち込んでいる疑いがある」とリュックサックを一体一体調べ始めたことで、騒ぎは一変。
この『影パトロール』は、今年初めて結成されたボランティア組織で、隊長のヤシャガミ桐山（41）は『生前と異なり幽界には薪ストーブの取り扱いルールが曖昧。炎が原形を保てなくなる事故が増えており、全参加者の安全のため検査を強化した』と話す。だが、正体不明のナイフ型精霊が混じって紛糾し、参加者の中には『本体を触られて本気で怖かった』（圧縮霧化精霊・ノゲラノミヒロ）と訴える声も。中でも、焚き火ナイフをトランス状態で振り回し続ける“豪風童子”ら陽気な小妖怪グループが抵抗し、影パト隊との追いかけっこが夜明けまで繰り広げられた。
薪ストーブメーカー連合会の代表、ムヨウラ炉次郎は『生前使用品の持込禁止などはあくまで推奨。本来、幽霊用リュックサックも透明認証タグ付きであれば制限を設けないはずだ』と語り、過度な検査がフェスティバルの魅力を損なう危険を指摘する。ダッチオーブン愛好家のあいだでは、昨今“無限蒸気漏れ”などの事故が増加していることから、適正なアウトドアチェアでの待機や幽火管理講習も重要との意見がSNSで話題となった。
参加者の多くは『みんな死んでなおアウトドアを愛しているのに…規制ばかりでは魂が乾く』と嘆く一方、『初めて冥界の夜風に包まれながら薪ストーブ調理をした。規則は増えたが仲間と語り合う時間は変わらない』（キャンプ歴15年の元死刑執行人・コモトリ十六夜）と肯定的な声も。フェスティバル事務局は影パトロールの役割について「来年以降、透明な運営のため全霊体参加型の意見聴取会を開く」と表明している。異界のアウトドア文化は、規制と自由の狭間で揺れながら、亡き者たちの新たな共生の形を模索している。
コメント
影パトさんも悪気はないんだろうけど、魂の荷物検査は落ち着かないよね。私も一度、成仏証明を忘れて冷や汗（出ないけど）かいたことあるし…イベントの楽しさ、もう少し大事にしてほしいな。
夜明けまで追いかけっことか懐かしいな〜。生前の縁日を思い出したよ！でも幽界ならではのストーブ事故、実は毎年ヒヤヒヤしてる。適度な規則も悪くないけど、フェスの自由な空気は守ってほしいな。
焚き火ナイフ競技、見たかったのにパトロールとか…まあ事故が増えてるなら仕方ないかも。でも、私たち幽火族には煙ルールが馴染まなくて困っちゃう。透明認証タグ、便利そうだから次回参加用に探してみようっと。
「魂が乾く」に激しく共感…。せっかく死んだはずなのに、規制ばかり増えちゃ日々に張りがなくなります。それでも冥界の夜風の下、仲間と居られる時間はやっぱり格別…少し切ないけど、だからフェスはやめられないですね。
影パト隊のやりすぎ感、ちょっと笑っちゃった。あの世まで監視社会になるなんて！でも、不死者が蒸気漏れで消し飛ぶ事故は勘弁だから、みんな安全第一でマナー守ろうぜ。来年はもっと平和に楽しみたいものだ。