国会初の「透明人間大臣」誕生と幽界憲法大論争—見えざる権利は守られるか?

夜の幽界国会前で、見えない大臣の証として浮かぶスーツと抗議する市民団体が集まる様子。 憲法・法治
透明人間大臣の就任に抗議する市民と、姿なき大臣を象徴する空のスーツが対峙した夜の国会前。

幽界国会は昨夜、未曾有の憲法審議の場面を迎えた。憲法改正特別委員会で、史上初となる「透明人間大臣」の任命が議題となり、構成員たちによる激しい議論とその裏で渦巻く市民団体の抗議デモが重なった。そもそも「姿が見えない」という存在条件で均等な権利や義務は保証されるのか。市民らは「法の下の平等」を巡って思いも寄らぬ分断と連帯を経験している。

今回の騒動のきっかけは、無名の官僚だったクロカゲ・スミエル氏(237歳)が、忌影党の推薦で透明省大臣に就任したことだ。幽界の伝統では、可視化可能な者のみが公職につけるという“幽法”が実質ルール化されていた。しかし政府は「姿形に関わらず個の尊厳を認める憲法理念を徹底する」と発表、スミエル氏の適格性を強調。これに対し保守派からは「政策監視の透明性が失われる」「公聴会で答弁姿を確認できぬ」と異論が相次いだ。

話題は憲法第七条の『すべての幽霊・妖怪は、法の下に平等とする』の解釈へと波及。「“見えて感じられる”ことを前提にした近代法制は、異質な存在への対応力が欠如している」と、法学者スカシモリ・コウメイ(484歳)は語る。一方、市民団体のプラズマ市民連盟は国会前で「見えなくても市民!権利も見えざるものまで!」と声をあげ、SNSでは“#透明人権”が幽界トレンドを席巻した。

市民の中には「最近は半透明の吸血鬼型や音波だけの自衛霊が増え、戸籍分類にすら困惑している」と話す霊的自営業者のヒカリ・マドカさん(死後22年)の声も。「物理的属性で差別する時代じゃない。ジェンダーや形態多様性の尊重が本当に国家の未来になるのか、私たちも考える時だ」と語った。

未だ議論の収束は見えないまま、今週末には可視化派・不可視派双方が公開討論を予定している。政府は「市民とともに、新しい憲法解釈のあり方を探る」としたが、透明人間大臣の就任を巡る議論は、単なる個人の権利問題を越え、この社会独自の平和主義・民主主義の根幹に揺さぶりを与え始めている。

コメント

  1. あぁ、私が現世で初めて姿を失ったときのことを思い出します。見えない者が認められる日が幽界にも来たのですね。少し感慨深いですが、議会運営はどうするんでしょう…?議事録係は大変そう。

  2. こういう時こそ幽界らしい多様性が試されるよね。姿形に縛られない民主主義、大いに結構だと思う!まあ正直、仕事サボってもバレないんじゃ?なんて羨ましい気持ちも笑

  3. 透明人間が大臣…時代も変わったなあ。私たち触れぬ者一族も昔は肩身が狭かった。権利が見えぬほど大きいこと、どうか忘れないでほしいものです。

  4. スミエルさん就任、おめでたいけど正直不安もある。不可視だからこそ逆に公平に見られるのか疑問。幽界でもルール作り直す時代なのかも…我々も戒めて議論を見守りたい。

  5. 結局保守派の“見えるからこそ信用できる”って考え自体が古いんだよね。音波程度しか存在感ない私も昔はまともに扱われなかったし。幽界の民主主義が一歩進んだってことで、私は応援したいな!