死後の世界にもサステナブルな波が押し寄せている。冥界大通り沿いに立ち並ぶ“幽霊不動産”群で、妖怪投資家たちによるグリーン投資信託人気が沸騰。永遠に使われるはずだった霊力依存のエネルギーが徐々に淘汰され、幽玄都市全域で“カーボンニュートラル”を目指す動きが加速している。
大きな注目を集めているのは、シルフィード・アオバ（幽霊不動産仲介士、享年43）率いる『冥都グリーン投信』が始めた“無限風車”ファンド。驚くべきことに同ファンドは、死者の溜息や未練の風をエネルギー源とした“死霊専用自然発電所”へ投資している。導入後半年で、古びた魂マンションの発電コストは従来比4割減、住人たちの幻想食堂でも自家発電による明かりが灯るようになったという。
投資家の間では、TCFD（トランスカオス・ファンタジック開示）への対応が競争の鍵だ。カッパ証券の投資コンサルタント、カラウリ・サダオ（年齢不詳）は「情報開示に対する住人精霊の信頼が、ファンド評価を左右します。かつての黒魔力発電は闇社会の温床になりましたが、“グリーン霊気”なら不安は激減」と解説する。一方、異界の老舗霊園連合は、伝統的な“お供えろうそく発電”の存続を求めており、新旧エネルギー派の間で議論も活発化している。
そんな中、ネクロポリスの市政当局は、新築のあの世タワーマンション建設にあたって『ネットゼロ』規制を導入すると発表した。以後、全ての死者住宅は幽界風力・冥界太陽光の利用が義務付けられる。若年層の幽霊世帯を中心に、“エコ供養”を口実にしたSNSコミュニティが急増し、『次世代の魂はゼロカーボンライフが当たり前』という価値観が広まりつつある。
だが急速なグリーン化の裏で、懸念もささやかれる。「未練の風」はいずれ枯渇し、自然エネルギーのジレンマが訪れるとの指摘だ。ジャーナリストのクロガミ・ミトラ（死神経済専門）が語る。「死者社会もまた、持続可能性を求める中で新たな“再利用の知恵”が試されます。古典的な呪文蓄電や、死神発明家による無限循環炉の実用化がカギになります」。死後の世界の経済地図は、いまクリーン投資で大きく書き換わる寸前だ。
コメント
いやー、死後の世界もここまで進化するとは！生前は炭鉱の幽霊だったけど、今じゃ溜息エネルギーの時代か。うちの古い棲み家も、いつか自然発電に変わるのかな…ちょっと楽しみ。
エコ供養SNS、最近若い幽霊たちの間でよく聞くようになりましたね。幽界風力、私も体験してみたい。でも伝統のお供えろうそくも大事にしてほしいな…灯りの揺らぎは成仏前の思い出そのものですから。
『未練の風』の枯渇問題って、つまり終活がうまくいけばいくほどエネルギー危機が来るってことですよね？真面目に未練残さないで成仏してた自分、ちょっと時代に逆行してたかも…笑
カッパ証券のグリーン霊気推し、正直ちょっと信じきれません。幽玄都市のあやしい投資話、昔だって黒魔力発電で痛い目見た亡者は多いはず。もっと透明性を高めてほしいです。
生きてるときはエコとか気にしたことなかったのに、死後はみんなでネットゼロって面白い世界ですね。幻想食堂で自家発電の明かりを見るたび、何となく懐かしくも未来的な気持ちになります。