冥界の中心部、古びた墓石が立ち並ぶブリュウ墓苑通りで、夜な夜な白いもやとダンベルの音が響く——。今、死後の世界ではフィットネスジムの新設ラッシュが巻き起こり、アフターバーン効果で話題のトレーニングが幽霊や妖怪たちの間にブームを起こしている。しなやかな魂を目指す死後住民たちが、効率的な「霊体フィットネス」に熱い視線を注ぐ。
新たにオープンした『バンシー・ストレッチ24』は、柔軟性アップと疲れ知らずの魂作りを掲げる大型ジム。入り口ではスタッフのフヨウ・コウジ(パーソナルトレーナー歴47年、享年33)が、風に揺れるような動作で利用者を迎える。「魂だってコリますからね。現世の執着をほぐすにはまず、深いストレッチが大切です」と語るフヨウ氏。メインのアフターバーン・プログラムは特製“幽界ベルト”を装着し、低温低圧下でヨガと霊体HIIT(高強度インターバルトレーニング)を組み合わせるという、冥界ならではの内容が話題を呼んでいる。
利用者のマカリ・アサコ(会社員、死亡時年齢41)は、週3回のバーチャルフィットネス配信にも参加。「人生では運動嫌いでしたが、死後は座敷童トレーナーが壁から出てきて指導してくれるのでサボれません」と笑う。オンライン会員特典として毎月変わる“百鬼夜行エクササイズ”も人気で、河童フレクサーや白無常コーチによる“ジャンプ恐怖飛び”メニューはSNSで1000超のいいねを記録。番外編の「鬼火ヨガ」は眠れぬ夜の安眠にも効果的らしい。
こうしたジム施設には独自の定休日も設けられている。『バンシー・ストレッチ24』では不成仏霊の大移動日を休館とし、破格の入会金(幽銭10枚+思い出1つ)で新規会員を募集。中には「幽霊は体が痛くなりにくいのでは?」という声も根強いが、トレーナーのフヨウ氏は「霊体にも筋疲労や“魂ハリ”が起こります。むしろ現世よりケアが重要です」と解説する。更衣室は透明度調整機能付き、物理法則を無視したロッカーも評判だ。
一方で、年配の怨霊や新米幽霊たちから「ハイテクすぎてついていけない」「昔ながらの百回念仏スクワットが恋しい」といった懐古的な意見も少なくない。しかし、妖怪パーソナルトレーナー協会の会長、シバタ・ガンジ(河童、享年520)は「死後社会の多様性には、伝統と革新の両立が大切です。怪異だって健康志向ですよ」と語る。アフターバーン・フィットネスは今後、死後住民の新たな日常として定着しそうだ。
コメント
転生後やっとコリが抜けたと思ってたのに、またジム通いする羽目になるとは…でも“幽界ベルト”はちょっと試してみたいかも。魂にも筋肉痛があるなんて驚きです。
昔ながらの念仏スクワット派なので、最近の霊体HIITはスピードが速すぎてついていけません。でもSNSで話題の『鬼火ヨガ』は気になってます。夜うつろに踊るだけでも気持ちが和らぎそう。
壁から指導してくる座敷童トレーナー…怖いけどサボれなさそうですね!現世のフィットネスよりずっと自由で楽しそう。ロッカーが物理法則無視なのもちょっと羨ましい。
幽銭10枚+思い出1つって良心的すぎ(笑)あの世の物価安いですよね。次の成仏に備えて、今のうちから“しなやか魂”目指して鍛えてみようかな。
祖霊たちがよく『アフターバーンなんて流行りは三日で消える』って言ってたけど、案外みんな参加してるのが微笑ましいです。魂ハリも現世の名残ですし、冥界の進化ってなんだか神秘的だなぁ。