あの世の中心区クラウド街で、幽霊や妖怪たちが通う体操・新体操クラブ「シエル・シルク」が近年“推し活応援”ブームで賑わいを見せている。生前できなかった夢や憧れをこの世でもう一度叶えたいと集う死後の住人たちが、跳馬やボール手具を使い見事な演技を披露。一見静かな異界の日常の中で、彼らの柔軟性と友情、そして応援文化が新たなスポーツシーンを生み出している。
クラブ設立12年目の「シエル・シルク」は、幽霊体操選手たちの聖地として知られ、毎夜22時になるとひんやりとした体操ホールに透明な参加者が集まる。「目には見えない技術力」と評判だが、実際の演技は極めて高精度。跳馬は時に浮遊し、柔軟体操では脚がぐるりと1回転するなど物理法則を飛び越えた演技も珍しくない。新体操部門では、カラフルなボール手具が宵の空を流星のごとく飛び交い、たまに壁をすり抜けて表通りに出てしまうが、それもまた幽世スポーツの醍醐味だ。
最近話題となっているのは、部員のサクライ・ヨミカ(享年17)による“シルクハット跳馬後方回転”だ。彼女は競技中に愛用のシルクハットを跳馬の上に置き、その上を三回転半しながら華麗に着地。SNS「アストラルひよこ」では3万リツイートを記録し、多くの幽霊青少年から「ヨミカ先輩こそ推し」「私も推し帽子で跳びたい」などの声が続出している。ヨミカさん本人は「浮力調節が肝心。シルクハットがずれたら悲しみに沈みっぱなしになります」と、死者ならではの冗談を交えて語った。
新体操応援団の推し活も拍車がかかっている。応援団長を務めるゾンバ・レイコ(元整形外科医・134歳)は「生前は怪我が怖くて見る専でしたが、今は“幽体離脱応援”で団員みんながマットの上に魂を飛ばし、選手と一体になれる。推しの演技に合わせボールやリボンがふわりと空中遊泳するのは夢のよう」と涙ながらに話す。応援グッズとして、クラブ特製の“推しサシェ”(香り袋)や“冷感光るうちわ”が飛ぶように売れており、お揃いの透明ジャージも次期入荷待ちという盛況ぶりだ。
異界スポーツ評論家のダヌマ・セイリュウ(霊歴210年)は、「死後の世界で“推し活応援”がここまで社会現象化するのは初。応援文化が選手の精神エネルギーを高め、演技のクオリティもさらに異次元化している。やがて人間界のクラブとも交流が進み、“推し”を超えた新しいスポーツのかたちが生まれるのでは」と分析する。来月開催予定の全異界体操大会には450体もの選手・応援団が集まる予定で、跳馬とボール手具が宵闇にきらめく未体験の大会が期待されている。



コメント
ヨミカ先輩のシルクハット跳馬、またやってくれましたね!あの世でしか見られない大技、毎回SNSで動画見返しちゃいます。生前も体操やっておけばよかったと今さら後悔…(笑)。
推し活がここまで広がるなんて幽界の時代も変わったものだねぇ。魂と魂が応援で繋がる感覚、どこか懐かしい。私が成仏する前に、現世クラブとの交流も見てみたいもんだ。
サシェや光るうちわ…応援グッズ、うちの墓にも配って欲しい!応援団のみんなが幽体離脱して一体化って発想、あっち側ならではでちょっと笑いました。でも、壁抜けたボールの後始末は誰がやってるんだろう?
幽霊だからって体操も新体操も物理無視なのズルい!でも、生前できなかったことに挑戦できるのはうらやましいです。推しの演技、来世でも応援したいくらい!
応援文化がスポーツの形をどんどん変えていくんですね。転生してもまた参加したいくらいワクワクします。宵闇にきらめくボール…幽界の日常なのに、ちょっとだけ涙が出そう。