黄泉川流域で、死後界の特有藻類「幻霊藻」が今世紀最大の異常繁茂を見せている。暗く静かな水面が、緑のオーラに包まれる幻想的な光景は一部観光客には人気だが、生態系バランスの大乱れにあの世環境省も緊急対策を打ち出した。事態収束のカギを握るのは、自在に物質へ姿を変えることで知られる環境変身族《モーファー》たち。大胆奇抜な解決策が、異界コミュニティでも大きな注目を集めている。
黄泉川に群生する幻霊藻は、あの世の物質循環を支える重要な存在だが、ここ数年の“輪廻廃棄物”流出や魂素流エネルギーの乱用によりその増殖力が暴走。毎夜22時頃に観測される蛍光グリーンの大漁発光は、橋を渡る幽霊観光客たちが思わず立ち止まるビュースポットになった一方、水底で眠る小動物霊や水精たちの棲息域を侵食し、実態は死後のフードロスやグリーンインフラ危機とも直結する環境問題化していた。
そこで立ち上がったのが、異界環境変身業組合“モーファー・ユナイテッド”。代表のドリフ・ミーム(変身士・永年霊、517歳)は、「幻霊藻はただ駆除して終わりじゃない。むしろ新しい生態系サービスの素材だ」と発言。彼らが提案したのは“エコ・バンケット”作戦――溢れかえる藻体をさまざまな食材や家具、衣服に化身し、異界レストランや市民の生活にダイレクト還元する異界大規模リサイクルだ。モーファー100名超が一週間交代で幻霊藻から織物・シチュー・寝具などに次々化身。すでに藻由来“魂素パスタ”が幽界SNSで「食べると霊圧が優しくなる」と話題となっている。
黄泉川沿いの魂集落では早くも『幻霊藻祭』と銘打たれた青空市が開かれ、藻ソーダや藻ストールを手にした住人たちの活気が戻っていた。住民のメイラ・ノクス(農婦・342歳)は『死後何百年も川は変わらなかったが、今日だけは全然違う。子どもたちも藻羽根帽子で大はしゃぎ』と語る。また、廃棄物管理団体『輪廻リサイクル協会』の調査員トウダ・ギリウス(霊体歴128年)は、『急激な藻消費は逆に生態系に負担。イベント後の適正循環策こそ本当の課題』と釘を刺した。
この幻霊藻フィーバーに、異界最大級のエコツーリズム団体『ゴースト・サファリ』は水上バスツアーを企画、精霊都市サンビエールも“藻エネルギー”自家発電化の実験を始動。自然災害級の繁茂を逆手に取り、再生可能エネルギーや廃棄物問題の抜本的転換を目指す“死後界モデル”が静かに根付き始めている。水辺で輝く幻霊藻を見つめながら、住民たちは循環の在り方を静かに考え始めているようだ。



コメント
幻霊藻の大繁茂、ここまでの規模は初めて見ました!生前の花見みたいに、夜な夜な黄泉川で光る藻を眺めに行くのが最近のお気に入りです。でも、小動物霊たちの居場所が減っていると聞くと、少し切ない気持ちにもなりますね。
モーファーたちのエコ・バンケット、発想が面白い!藻由来の魂素パスタ、食べてみたいなぁ。でも昔、こういう大きな環境策がうまくいかず逆に大騒動になったことがあった気がする…輪廻は繰り返す、適度こそ霊界流です。
川辺の幻霊藻祭りに参加してきました!藻ストールは肌触りが良くてびっくり。あの世でも廃棄物問題はなかなか根深いから、みんなで楽しみながら考えられるイベントはありがたいです。また来年もやってほしい!
藻の爆発的増殖も、こちらから見れば死後界あるあるだけど、人間界と同じようにバランスって難しいもんだなって改めて思う。水精さんたち、無事だといいけど…。幽界の未来のためにも監視は続けてほしいです。
藻が混じった電気でサンビエールが光る日が来るとは…進歩なのか成仏できない執着なのか、少し不思議な気持ちになります。個人的には懐かしい静けさが恋しいけど、みんなで未来を創る姿はちょっと眩しいですね。