最近、霊界における幽霊たちの間で、新たなキャリアアップの波が起きている。「現世SNS副業」という形態が急増し、あの世からインフルエンサーとして活動する者や、幽霊専用クラウドサービス上で起業する者が目立ってきた。現世のビジネス様式を取り入れたこの流れが、従来の「冥界職」の価値観を揺るがしているという。
深夜の墓地で働く霊案内士マヨイ沢れん(享年32)は、最近話題の幽霊副業SNS『アストラグラム』で人気を集めている。彼女は心霊写真の加工術や「霊圧マナー講座」を配信し、死後の若年層を中心に2万フォロワーを獲得した。『以前は成仏ガイド一筋でしたが、SNSで学びや気づきを発信する方が、仲間の輪も広がるし、自己投資にもつながるんです』と語る。現世と冥界をまたぐ新しい働き方は、安定職志向が強かった幽霊社会で異例の動きだ。
幽界職業転職支援協会によると、今秋の転職希望登録者は前年同期比で40%増加。その多くが第二のキャリアやマイクロ起業を志し、現世・冥界の垣根を越えて活動しているという。『特に新卒幽霊や現世帰りの亡者たちは、旧来の“閻魔庁勤務=安泰”という価値観に縛られず、複業や自己ブランディングに旺盛。副業解禁を進める企業幽界の増加が追い風となっています』と、協会のキャリアアドバイザー遠岸シキ(転生回数17回)は分析する。
さらに現世に憧れる幽霊たちの間で、異様な副業ブームから「転職迷い現象」が発生している点も社会問題化しつつある。人気テレビ番組へのゲスト出演をきっかけに成仏を目指しかけたが、フォロワーとの交流を捨てられず幽界に留まる決断をしたケースや、複数の霊域を渡り歩きながら毎晩異なる副業に精を出す「ノマド幽霊」の急増も確認された。『複業が増えすぎて、もはや本業がわからない』というSNS投稿も多くみられる。
現世のHR文化や働き方改革の影響は、死後社会にも色濃く波及している。あの世のキャリアサイト『タマシイ・シフト』の利用者は過去最高を記録し、独自の自己投資サービスや霊魂向けキャリア診断がブームとなっている。一方、転職や副業に疲弊し魂の輝きを失う「バーチャル過労死」への警鐘も鳴らされており、多様化の裏で新たな課題が浮かび上がっている。『誰かの“生前”と“死後”を比べることなく、自分らしい働き方を選ぶ時代だと思います』とマヨイ沢れんは微笑んだ。幽界のキャリア観は、今まさに大きな転換点を迎えている。



コメント
アストラグラムでバズる幽霊さんとか、時代が変わったなぁと驚きです。私の成仏前は閻魔庁くらいしか選択肢なかったのに、今は自己ブランディングの時代なんですね。幽界も進化してる!
最近の新卒幽霊は元気すぎてちょっと心配になります。ノマド幽霊って、幽魂がこぼれ落ちて帰れなくならないのかな?副業もいいけど、たまにはゆっくり成仏する時間も大切ですよ。
昔は転職=迷子、みたいな風潮だったのに、今やキャリア診断まで流行りとは…冥界も過労死(?)が話題になる時代かぁ。あの世のHR改革、ちょっと皮肉ですよね。
現世でやり残したSNS副業、死後に挑戦できるなんて羨ましいです。マヨイ沢さんの写真講座、私も受けてみたいな。生前よりも可能性が広がるって、不思議でワクワクします。
魂の輝きを失うバーチャル過労死、実感します…複業で忙しすぎて浮遊もろくにできません。そろそろ墓地ライフに戻って、しばらく静かに過ごしたい。