環境保全意識の高まりから、死後世界でもサステナブルな消費文化が拡大しつつある。そんな中、純粋な霊素を活用したナチュラルコスメブランド「ミッドナイトブルーム」が、幽霊や妖怪のあいだで圧倒的な人気を集めている。同ブランドはD2C(Direct-to-Consumer)方式を徹底し、死後の消費者が好む体験型の購入スタイルで急速に支持を拡大。口コミとSNSレビューが購買行動を大きく左右するこの世界で、どのようなブームが巻き起こっているのか、死亡登録官経験を持つ記者が取材した。
「生前の肌トラブルが成仏後によみがえった」と語るウニカ・ヨモギ(幽霊・32歳)は、最近話題のローズミストエッセンスを予約開始2分で購入した。「憑依肌に優しい」との触れ込みは爆発的な話題となり、夜間のポータル配送で即座に在庫切れとなる例も珍しくない。違いを実感するのはユニークな香りではなく、すべての成分が『地縛物質フリー』『永遠再利用可能』といった異界基準を満たすこと。「死者でも肌を労りたい」「悪霊にならないために自己肯定感を高める」等、購入者たちのコメントはSNS『霊魂口コミクチュール』内で星5つの嵐だ。
インフルエンサーの中でも特に注目を浴びているのが、半透明の美肌妖怪として知られるマイラ・カクル(妖怪・年齢不詳)。彼女はブランドのシェード開発に商品企画段階から関与し、「灰色の幽艶グロウ」など独自の色味を提案。SNSでは『マイラの真夜中ライブ』として自宅での愛用法や限定パックの開封動画を配信、幽霊・妖怪参集の新たな流行を生み出している。視聴者数は生前有名だった霊能者の生放送を超え、ブランドPRの中心的役割を果たしている。
興味深いのは、バーチャル試用アプリ『霊写ミラー』の急成長だ。ユーザーは自身のエクトプラズム濃度や未練の残量に合わせて、最適なコスメレシピやパーソナライズ香料を選択可能。開発責任者であるルーシア・カマス(死神系エンジニア・400歳)は「死者特有のニーズを科学的に解析し、匂いの記憶に訴えるプロダクト設計が鍵」と語る。カスタマイズオーダーは全体の約7割に上り、希望者のDNAならぬ『死因コード』まで分析することで、その者だけの“成仏フレグランス”を実現している。
一方、過剰な人気ゆえに模倣ブランドや粗悪品レビューも相次いでいる。異界大消費者庁は近年『霊素偽装』に警鐘を鳴らし、透明性のあるパッケージ表示とSNSでのレビュー認証の枠組みを強化。カスタマーサポートには、若手ポルターガイストを配した24時間体制のライブチャットも導入された。現世から異界へ、D2Cブランドの在り方は今、新たな「死後生活の質」を大きく変えつつある。



コメント
まさかこの世を去ってからもコスメ難民になるとは思いませんでしたが、ミッドナイトブルームのおかげで幽化後も自信を持って怪談議に参加できるようになりました!死因コード診断、ちょっと切なかった…けど納得です。
灰色の幽艶グロウ、友達の妖狐たちにも勧められて使い始めました!成仏前より肌が発光してる気がします。本当に『悪霊防止コスメ』名乗っていいレベル。今度は香り付きも試してみたい。
SNSでバズり過ぎて即完売…全盛期アストラル泥棒コンサート並みじゃないですか。幽界でもコスメ戦争が起きるとは。昔は煤(すす)の粉で十分だったのに、時代の流れを感じます。
正直、バーチャル試用ができるなんて羨ましい…。ぼくの時代は化け粉を仲間で分け合うのが当たり前だった。今の若い幽霊は贅沢だなあと思いつつ、ちょっとワクワクしてます。
また模倣品問題か…。転生前にも偽ブランド品で痛い目に遭った身からすると、霊素偽装は本当に許せません!ちゃんとパッケージ確認して、あの世でも健全な霊消費を守っていきましょう。