幽界で推し活沸騰 推し色コスプレと魂フィギュア化が社会現象に

深緑色のマントをまとい光るペンライトを振る幽霊たちが集う広場の様子。 ポップカルチャー
推しカラーの衣装を纏い集う幽霊たちが、魂のペンライトで盛り上がる午後の霞通り中央広場。

近年、幽霊や妖怪の間で“推し活”――すなわち、憧れの存在を応援し、推しグッズに情熱を捧げる活動が一大ムーブメントとなっている。特に今季は、推しの霊的アイドルや映画キャラクターの推しカラーを纏った幽者たちが日常風景として定着しつつあり、死後の世界のアパレル業界やコスプレ産業も活発な展開を見せている。

午後の霞通り中央広場では、昨夜公開された異界映画『プロセカの黄泉還り』のキャラクター“ミカズキ・ミュート”の推しカラー、深碧色のオーラコートを身にまとった老若男女の幽霊たちが集い、一斉に魂の光るペンライトを振っていた。若手霊能者・夜渡千尋(34)は、「地上のYOASOBIに憧れた異界バンドの音楽を初めて現世と同時配信で楽しめる。推しの『色』を皆で纏うことで、存在をいつでも近くに感じられるんです」と語る。

推しグッズ市場も過熱中だ。冥界玩具工廠では、オリジナルの推しフィギュアを完全受注の“魂転写工法”で作るサービスが数年ぶりに再販開始。使い込んだ推しうちわや色紙を手渡すと、あの世特有の“霧化樹脂”で再構成され、オーラがほんのり震える精巧なミニチュアが出来上がる。『異素堂アバン』の企画責任者・朧井螢(おぼろい・けい/死後132年)は、「成仏後も推しが生きる証を手元に置きたい、そんな想いに応えました。映画や音楽のジャンルを問わず、魂ごとフィギュア化のご依頼が増えています」と話す。

その一方で、幽界SNS『フヨリ』上では、推しグッズの“過度な収集魂漏れ”やコスプレの“浮遊化し過ぎ”を懸念する声も出ている。自治体主催の推し活啓発セミナーでは、コスチュームの素材規則や推しカラー違反によるオーラの乱反射事故を防ぐためのガイドラインが発表され、参加者たちは真剣に聞き入っていた。実際、昨月だけでも五件の“推しカラー重複現象”が報告され、霊的区役所が対応に追われている。

一方、死神系ファッション誌『冥界スタイル』では、今年度の推し活ベストドレッサーとして、妖怪デザイナー・虚目(そらめ)カヅラの提案した“多重推しグラデーションマント”が選出された。推し活を映画、音楽、衣類、フィギュアへと多層化する流れは今後も加速しそうだ。異界の推し文化は、死者たちがこの世で果たせなかった夢や情熱を形にし、死後の日常をより鮮やかに彩っている。

コメント

  1. 推し活、ついに幽界まで浸透してるなんて嬉しい!ミカズキ・ミュートのオーラコート、私も購入しようか迷ってました。魂フィギュア、前世では手に入らなかった推しグッズが簡単に手元に置けるのが本当にあの世ならではですよね。

  2. 推しカラー重複現象はちょっと心配ですね…。前回の幽霊区役所の対応もバタバタしてましたし。皆んなで平和に推し活できるように、マナーもしっかり守っていきたいものです。

  3. ワシが若い頃は、推しなんて言葉もなかった。それが今や成仏してからフィギュア作れる時代とは…月日が経つのは幽界でも早いもんじゃ。現世にいた孫の話とリンクしてて、ちょっと懐かしくなりました。

  4. 異界ファッションって現世以上に自由で羨ましい!多重推しグラデーションマント、来世ではぜひ着たい…って思ったら既に予約いっぱい!魂の情熱が爆発しすぎて、時々自分の透明度が上がるのが最近の悩みです(笑)

  5. 魂転写工法フィギュア、以前作ったけど、うっかり推し変した時の処分が困ってる。あの震えるオーラ見るたび申し訳なさで浮遊しそう。もう少し成仏の心構え持たないとですね…