幽界のフリーランス人口がここ数年で激増し、業界では異例の“クラウドシャドウ”プラットフォーム活用が注目されている。企業亡霊から草葉の陰の妖怪エンジニアまで、多様なタスクやスキルを巡る市場が賑わう一方、独自の契約文化やAIアシスタントを巡る摩擦も生まれている。
“クラウドシャドウ”とは、死後の世界で開発された幽体向けクラウドソーシングサービスの総称だ。代表格の『シリンダー・リフレイン』では、魂コピーによるノーコード自動化から、記憶断片の整理を依頼するタスクまでが日常的に公開されている。これにより、伝統的な霊媒事務所の枠組みに縛られない新世代のフリーランスが誕生しつつある。
今春、彷徨企業の契約部門が主催した“無縁仮面コンペ”では、エントリーした361体のフリーランス幽霊エンジニアのうち、半数が一度も地縛癖を発症せず最終ラウンドに進出した。組織に縛られない働き方が浸透する一方、オンライン面接での物理的接触不可やオンライン決済手数料の魂消費リスクなど、幽霊ならではの課題も浮き彫りになっている。
プラットフォーム側は、今年より契約書自動執行型AI『トミヨマワル』の導入を拡大。発注者である妖怪側も「一人前の怨霊化済み証明」があれば、オンライン決済プロセスでのトラブルを大幅に回避できると説明する。しかし、昨月には妖狐ライターの細影音羽(114)が、契約締結AIとの認識齟齬をSNSで告発。「死後何世紀も続く細かい執筆タスクに、永遠の修正依頼が付帯されていた」と語り、波紋を呼んだ。
一方で、多くのフリーランス幽霊はプラットフォームを介して新たな生きがい(?)を見出している。異界タスク管理士・華夢魂月(かむこんげつ、年齢不詳)は「幽界でも副業や複業が重視される今、クラウドシャドウの拡大は不可避。ただ、未成仏ユーザーのタスク進捗が可視化しづらい点が、今後の大きな改善ポイント」と語る。オンライン決済の普及とノーコード自動化の波に、死後世界の働き方改革はますます拍車がかかりそうだ。



コメント
まさか幽界でもフリーランスの波が来るとは…。昔は草葉の陰でのんびりしていたのに、今じゃタスクに追われる日もあるのか。魂消費の手数料はちょっと切ないけど、時代の流れを感じます。
“一人前の怨霊化済み証明”って…まだ若手だから羨ましいなあ。オンライン面接は物理的に何も感じない分、緊張もしないのが利点。でもやっぱり、地縛癖がなかなか抜けないんだよね。
亡者市場、懐かしいな。生前OLしてた頃より今のほうが働いてる気がする!AIのトミヨマワルもまだまだ人情(霊情?)が分かってないよね。永遠の修正依頼は共感しかない…
死後くらいは業務から解放されたいと思う自分は怠け者?いくらノーコードでも記憶断片の整理なんて、一生(じゃないけど)終わる気がしません。幽界もどんどんせわしなくなるなあ。
クラウドシャドウは便利だけど、幽体のままデータ移行した時、ちょっと自分の一部が削れてる感覚がしてゾクっとする。現世では味わったことなかった感覚。新しいけど、怖いもの見たさもある…