死後世界初「車いすバスケ×eスポーツ」融合リーグ開幕へ 透明車いす職人と妖怪実況が推す新時代

透明な車いすに乗った半透明の幽霊たちが近未来的な体育館のコートでバスケットボールを競っている様子。 車いすバスケットボール
幽界の選手たちがカスタム車いすで白熱した試合を繰り広げる新リーグのコート。

幽界第二体育場でこの秋、新感覚スポーツイベント『ゴースト・ホイール・リーグ』が開幕する。車いすバスケットボールとeスポーツを融合させ、幽霊や妖怪、半透明の精霊選手たちがチームを競い合う前代未聞の大会だ。幽界スポーツ庁による主催で、インクルーシブな社会作りを目指した革新的ルールと異形のカスタム車いすが注目を集めている。

主将を務めるのは、輪廻市バスケクラブ所属の有名選手・油屋浮八(31)。生前は義足ランナーだったが、死後は全身透過型の車いす『ファントムクルーザーα』で活躍する。今大会用には、宙に浮遊して段差を無効化できる新型車いすが適用される。作成を担当したのは、冥界最古といわれる車いす工房『幽輪屋』の職人・煙草島ますだ(406)。彼は「見えない幽体にも体型差がある。車いすも一隻一隻、霊圧に合わせて積層ビーズから削り出すのがこだわり」と熱弁。現世のテクノロジーを学びつつ、妖怪向けには触手用アームや無重力ホイールも搭載された。

ルール面でも大胆な工夫が施された。物理法則を超越しがちな霊種のため、ゴールは各自の“魂エネルギー”で見え方が変わるマルチスペクトル仕様。さらに遠隔地の精霊選手がストリーミングで参加できる「半実体同期制」も導入。eスポーツ連携を推進したのは、実況AI『オルナス=ヨミ』と妖怪ストリーマー・蛞蝓野たえ(年齢不詳)のコンビだ。蛞蝓野は「物理参加も電脳参加も、スポーツの情熱は同じ。幽界でも“みんなで遊ぶ”ことがイチバン」と語る。

障がい者スポーツを支援するボランティアの輪も広がっている。大会前日のメディアデーには、半透明の小学生亡霊や老齢の付喪神など約200名がルール体験教室に参加。大会運営ボランティアの茅森金太郎(幽霊・68)は、「生前も車いすバスケを応援していたが、今は幽界ルールを覚え直し中」と意気込む。登録ボランティアの半数以上が生前――つまり現世で障がい者スポーツ経験者なのも、異界ならではの特徴だ。

SNSでは「ゴールが時間によって動いて見えるの逆に難しい」「職人のカスタム車いす、来世で乗ってみたい」など反響が続出。幽界バリアフリーフォーラム理事の羅城門ミドリは、「生と死、健常と障がい、現実と仮想…そういった境界すら遊び越えるユニバーサルな熱気が広がっている」とコメント。準備は着々と進み、透明な汗と想いがコートに積もっている。第1回大会の優勝チームには、魂の光で浮かび上がる“永久優勝旗”が贈られる予定だ。

コメント

  1. ファントムクルーザーα、あの世の技術もここまで来たかと驚きました!地上じゃ味わえなかった浮遊感、転生したらぜひ体験してみたい…

  2. 幽界に来てから色んなルールに戸惑うけど、魂エネルギーでゴールが見え方変わるのは本当に不思議。子供亡霊たちも楽しんでる様子に懐かしさ感じます。

  3. 昔は成仏こそ正義みたいな空気だったのに、こうして誰もが集まってスポーツできる世界になって嬉しいです。実況が蛞蝓野たえって渋い人選だな!

  4. 魂のスペクトル次第でルールが違って見えるなら、ズルとか起きないか心配。まあ幽界ならではのカオスもまた良いのかも?

  5. 『透明な汗と想いがコートに積もる』って表現、妙に沁みました。もう幽界に来て何十年も経つけど、こういう熱気を浴びると生きてた頃を思い出します。