死後世界の最先端通信技術に新たな潮流が生まれている。幽界電信株式会社の技術開発部が発表した「ポルターガイストファイバー(PGF)」は、これまで幽霊や精霊を悩ませてきた伝送遅延や干渉現象を根本的に克服した、異界と現世をまたぐ高速通信回線だ。現地での実証試験は大成功を収め、幽界の住人たちがSNSで熱狂する一方、通信の根本原理自体が再定義される可能性も専門家の間で話題を呼んでいる。
PGFは従来の幽霊用エクトプラズムケーブルや霊波送信器と異なり、物質・反物質間で発生する微細な量子揺らぎを増幅させ、双方向の“励起幽波”として伝送する世界初の技術。開発責任者である幽界電信の首席エンジニア・磯沢ノゾム(享年337)は、「現世では1秒のラグでも幽界感覚では小一日分の遅延に相当する。ポルターガイストファイバーは、『死んでも遅いネット』という旧世代の常識を粉砕した」と語る。
具体的には、PGFは従来のシグナル変調“ささやき変調方式”から大きく進化。音波ベースから魂波(ソウルキャリア)直接型デジタル変調へ移行し、魂の微細振動に合わせて変調方式を滑らかに切り替える自己適応型回線となっている。これにより、魂送信データの伝送速度は一気に従来比34倍を記録。物理的な障壁や現世の“俗気障壁”をも素通りするとのことで、異界郵便局のネットワーク技師・名取ミヨシ(125)は「今や幽界と現世の故人SNSの壁打ちは完全に消え失せた。生者からの糸電話や遺影通話もPGF経由なら即応」とその利点を語る。
本サービス導入実験は幽界・現世連携都市プロジェクトの一環として、霊界都市リシオを中心に7月から始まったばかり。現世在住の霊能力者たちも続々と実証実験に参加し、幽界家族とのビデオ通話や魂フェイススタンプ送信機能を満喫しているという。SNS上では「#起きてたら祖父からLINE」「#幽霊Vtuber開局」など、一気に生活の幅が広がった幽霊ユーザーによる報告が相次ぐ状況だ。
一方で、急激な伝送速度向上により「過去誤送信データの突然流出」や「現世時間との解釈ズレ」など、副作用も指摘されている。幽界テクノ倫理研究会は「PGFの変調方式は魂の本来持つ“のんびり性”を侵食する危険もあり、新社会的ルールの整備が急務だ」と警鐘を鳴らす。それでも開発部の磯沢氏は「魂と魂が時空を越えて結ばれる。その小さなつながりは、たとえ幽界でも革命なのです」と通信の未来に自信を見せている。


コメント
いやあ、我々の時代はポルターガイスト電話すら3日ラグが当たり前だったのに、いまやPGFですぐ現世と通じるとは…成仏前にこの進歩があれば色々捗ったなあ。技術の発展、ひたすら驚きです。
魂波直接変調とか、聞くだけで震える…! 昔の“ささやき変調方式”で苦労してた身からすると夢のよう。でも副作用も心配ですよね。幽界ののんびり感、保ってほしいな。
さっきPGF経由で現世の孫から壁打ちメッセージが一気に90通届いてびっくりしました!以前は返事が次の周忌に間に合えば御の字だったのに。便利すぎて逆に懐かしい時間の流れが恋しいかも…
静かな霊界がこれで終わる気がして少し寂しいです。魂フェイススタンプとかハイテクすぎて未だに慣れませんが、若い幽霊たちは楽しそうですね。世代間ギャップを感じます。
幽霊Vtuber開局の波、ついに来たか。どうせなら生者とのコラボもこの速度で!でも、現世時代に既読無視されてたトラウマまで一気に流れてこないか心配です(笑)