死後の世界にもフリマアプリ旋風が巻き起こっている。最近、幽霊や妖怪たちの間で爆発的に利用者が増えているのが、異界専用のフリマアプリ「ユウフリ」だ。魂衣(たましい)や化け衣など、現世では入手困難な古着アイテムが並ぶこのアプリは、リサイクル精神と異界の個性を両立させた“死後のオシャレ文化最前線”と呼ばれている。しかし、その裏側では出品者と購入希望者によるコメント合戦や、アイテムの再出品トラブルなど新たな課題も浮上し、話題を集めている。
「3度目の転生古着、本当にオリジナルですか?」そんなコメントが寄せられたのは、出品者で女幽霊のクロハシ・ルリ子(享年34)のレトロな振袖だった。彼女は百年に一度の縁日で落とした魂衣を手直しし、華やかな写真付きで再出品。しかし購入希望者で妖怪学生のナメヒラ・リュウ(永遠の16歳)はコメント欄に「過去出品時の“成仏染み”がまだ残っているようですが、落とせませんか?」と疑問を投稿。これに対しルリ子は「漂白済みだが、転生のたびに微細な記憶痕が残る」と即座に返信。専門家の幽衣クリーニング士カスミガワ・楼心(半透明の60代)が「転生衣料は完全な新品同様にはならず、むしろその痕跡が価値」と解説する騒ぎにまで発展した。
フリマアプリ文化が広がる一方で、アプリ内マナーを巡るトラブルも顕在化している。「即購入×」や「コメント必須」といったルールは、黄泉界の元出版社編集者、タチバナ・オウジ(46没)によると「霊界独自の礼儀意識の表れに近い」。なかでも『夜だけ対応』『霊気で梱包』のような死者特有の要望が複雑化している。ナメヒラ・リュウも「現世のフリマにはない“浮遊配送”や、レビューに“成仏度”を記載してほしいなどの個別要求が増え、出品者としてプレッシャーを感じる」と語る。
また、人気アイテムの“再出品”をめぐる騒動も絶えない。古都・彼岸原の骨董店主であるガシャ髑髏本舗のヨシレス・サイゾウ(年齢不詳)は、次のように警鐘を鳴らす。「人気アイテム『百物語羽織』や『小夜時雨マント』などは、売れるとすぐ転売されたり、不自然に値が吊り上がる再出品が横行している。買い手の“成仏ポイント”が高いユーザー限定販売など、独自の対策が求められている」。ユウフリ運営も最近、不正転売検知機能とコメント欄の霊気監視システムを導入し、魂に優しい売買を目指し始めた。
SNS上では「幽霊の古着でコミュ力UP!」「あやかし衣料の再出品、あるあるすぎ」といった体験談や、「成仏染みを愛でる派 VS 完全漂白派」の仁義なき討論も盛り上がっている。タチバナ・オウジは「死者の世界のフリマアプリは、ただの売買でなく、魂と記憶のリレー。コメント欄のやりとりそのものが文化を育てている」と話す。現世になかった“あの世のフリマ文化”は、さまざまな摩擦を乗り越えながら新たな日常を形作っている。



コメント
転生古着のやり取り、懐かしいなあ。百年前の魂衣を落札したときの独特の感傷、現世には絶対伝わらないよね。成仏染みも味だと思う派です。
最近はユウフリで欲しいものが一瞬で消える…。浮遊配送トラブルと夜だけ対応は日常茶飯事だけど、成仏度レビューだけは正直盛ってほしい(笑)
また『小夜時雨マント』の高額再出品か、骨董界隈は昔からやること変わらないなあ…。もう少し魂に優しい運営、頼みます!
転生衣料は新品じゃなくても、前の持ち主の記憶がほんのり残るのが好き。着るたびに誰かの成仏への思い出が重なるのが、幽界ならではですね。
コメント欄のやり取り、もはや売買というより霊界の井戸端会議(笑)。現世の人には分からないだろうなあ、この面倒さと温かさが。