亡霊系Vlogがバイラル拡散中──“心霊宿探訪記”が魅せる異界の旅路

幽霊の男性がカメラを持って無窓旅館のロビーで猫又のコンシェルジュと足のない宿主に迎えられる様子。 Vlog文化
亡霊系インフルエンサー・知波瀬クリオが“無窓旅館”にチェックインするワンシーン。

死後の世界で今、Vlog文化が新たなトレンドとなっている。誰もが名前を知る亡者や妖怪たちが、現世と異界各地の“心霊宿”を舞台に、その日常と冒険を鮮明に切り取った動画を投稿。とりわけ注目を集めているのが、不死町在住の幽霊系インフルエンサー、知波瀬クリオ(享年32)が手掛けるチャンネル『幽宿地図帳』だ。その細部まで作り込まれたトラベルVlogは、亡者SNSで3日連続トレンド入りを果たした。

知波瀬クリオが最新作で取り上げたのは、夕闇渓谷沿いの“無窓旅館”。この旅館、外の光が一切入らない構造で、宿泊者の霊力が夜ごと増幅されると噂されてきたが、実際に彼がチェックインする様子から始まる映像は、まるで静謐な幽界ドキュメンタリー。到着後のロビーには、足のない還阿婆(宿主)や微笑む猫又コンシェルジュが登場し、柔らかなASMR調のささやきで視聴者を迎え入れる。動画途中で披露されたタイムラプス映像では、深夜の廊下をおどろおどろしく移動する自縛霊たちの“すれ違い挨拶”が記録され、その非日常感が一気にバイラル化した。

公開後、動画のコメント欄には『自分も今度、重力逆転階段で寝てみたい!』(迷宮町・半透明(22))、『ASMRルームで魂がほぐれた気分』『音もたてずにシーツを畳む還阿婆、推せる』など、熱心な反応が相次いだ。また、現世と接する投稿ネットワーク“エクトポータル”にも波紋が広がり、一部人間界のYouTuberたちが“亡者宿風”な旅動画を試みる現象も発生。専門家の口寄せ師・三途右京(51)は「死後社会の交流様式が映像によって再構築されている。幽霊たちの本当の魅力や生活が見える非常に貴重な記録」と評価する。

Vlog文化の急成長は異界の経済にも小さくない影響を与えている。無窓旅館ではクリオの動画公開翌日から“魂ガイド付きナイトツアー”が予約殺到。動画で登場した“音の出ない枕”や“霊体きざみ香”など限定グッズも即日完売となり、現世の収集家から高値で買い取り依頼が寄せられている。一方で、ある妖怪系評論家は「これほど異界の日常がオープンになるのは未曽有。伝統的な隠遁志向との摩擦も起こりえる」と慎重な見方を示す。

今後、“移動する墓地”や“触れられないカフェ”など未踏スポットを扱うVlog計画も進行中だという知波瀬クリオ。死後も続く新たな文化発信の波は、亡者たちの自己表現と交流の場をますます広げていくことになりそうだ。

コメント

  1. 無窓旅館、懐かしいなあ。昔転生したての頃に泊まった記憶がよみがえる。映像で見ると、やっぱりあの静けさが伝わってきて素敵。クリオさんのセンスに拍手!

  2. いや、枕が一晩で完売って……生前は寝具に頓着なかったけど、こっち来てからみんな枕にうるさいのは時代の流れか?旅館巡り、次の休魂日に行ってみようかな。

  3. 現世のYouTuberたちがマネ始めたってのは、なんだか照れくさいような気もするわね。亡者の日常が憧れられる時代が来るなんて不思議なものよ。

  4. ASMRルーム、個人的には魂が溶ける感じで最高だった!還阿婆さんのさりげない心遣いを見ると、ご先祖のこと思い出してほろっとしちゃう。

  5. 旅館の内部がこんなに公開されるの、少し複雑。昔は静かに沈んでいるのがよかった気も……でも若い霊たちには良い刺激なのかもな。