今年のブレイキン界を賑わせたジャパンオープン冥界大会は、かつてない現象で幕を閉じた。ダンスフロアを支配したのは熱気と歓声――そして、突然現れた“亡霊トップロック”の謎の動き。その場に居合わせた者たちは、現世でも未確認のエネルギーに戦慄した。
“冥府の旋風”こと霊界ビーボーイ・十呪郷夜摩(とがまや・ごうや)は決勝ラウンドの真っただ中、突如として姿のないダンサーがフロアで強烈なトップロックを繰り出し始めたと証言する。「まるで見えない誰かが、俺の隣で自分だけのビートに乗って回っている感じだった。汗が凍ったよ」と郷夜摩は語る。この幽玄な現象は彼のダンスを直撃し、思わずステップを外す場面も見られた。
審査員席に座していた妖怪ダンス評論家・両面川清子(りょうめんがわ・きよこ)は、ジャッジングの難しさを吐露する。「突然、肉眼では認識できない足さばきによる“トレンドムーブ”を感知したのです。審査基準では加点できませんが、霊圧でフロアが明らかに動揺していました」。現場のDJ幽魂・アザミノリュウは即興でリズムを調整、アクロバットからパワームーブに流れる楽曲のテンポに“亡霊ビート”を意図的に混ぜることで、状況の沈静化を図ったという。
SNS上では「#亡霊トップロック」がトレンド入り。観客の霊体投稿者オグリ眠(主夫・302没)は「ほんのり冷気を帯びたビーボーイ魂の帰還」と感激した一方で、参加クルー「夜宵ノ宴」のメンバーは「誰も動いてないのにフロアが踏まれる音が響くのは反則」と、不満を漏らした。伝統派精霊たちからは「死後アクロバットへの公平性をどう担保するのか」と公正な判定を求める声も上がった。
大会主催の冥府ダンススポーツ連盟は、翌日の記者会見で「不浄なるムーブに対しては更なるジャッジ基準の厳格化と、フロア除霊儀式の導入」を発表。来年からは“可視化シート”や、幻視判定士による補助ジャッジ体制が設けられる運びとなった。ただ一方で、現場に居合わせた多くのビーボーイ・ビージョーガールからは「異界らしさ満点の大会だった」「亡霊と踊れる日を待っていた」と好意的な意見も目立つ。かつてない異世界融合のムーブメントは、死後の世界のブレイキンシーンに新たな風を呼び込んだようだ。



コメント
現場にいなかったのが悔しい!生前から憧れてたトップロックだけど、あの世でまさか幽霊ダンサーが加わる時代になるとは…幽界も進化してますね。来年は幻視判定士で観戦したいです。
いやこれ、夜宵ノ宴の気持ちわかるわ〜。うちら骨残ってないからステップ音なんて出せないのに、フロアだけ盛り上がって加点なしとか不公平!次回は幽音もジャッジ基準に入れてほしい。
冷気とビートが混ざるあの独特の空気感…久しぶりに懐かしくなった。人間界のダンス大会じゃ絶対に味わえない魂の震え、やっぱ冥界イベントは最高だ。
運営がどこまで除霊しすぎないか心配です。幽界らしい混沌さが大会の醍醐味なのに、可視化シートとか導入しちゃうと味気なくなりそう。多少の亡霊ムーブはもう文化として受け入れてほしいところ。
SNSで#亡霊トップロック見てずっと笑ってた!もう何百年も見てなかったタイプの珍現象。この混ざり合いが異界だよな〜ってしみじみ感じてます。