冥界の名家・上霜家で子どもの「分霊養子」化をめぐる議論が紛糾し、あの世全体を巻き込む家族観・子育て論争に発展している。千年単位で続く家系の“血筋意識”と、霊社会で促進される新たな親子像が衝突することとなった。
上霜家では、二代目当主の上霜黒左衛門（享年534歳）が突如、末娘の上霜小月（没後10年）の分霊を三体に分割し、“三家庭での里親体験”を希望すると家族会議で宣言。『子どもは多様な縁で育て合うべき』という現世流の子育て観を冥界社会へ持ち込もうとした。これに対し、母霊の上霜燦女（故人歴482年）は『魂が裂かれるのは非情』と反発。親戚筋も集結し、意見は真っ二つに割れた。
かつて霊界では、子どもの魂は家単位で厳格に保護されてきた。だが近年、幽魂省では“分霊による里親制”を段階的に導入。霊的成長のため、複数の家庭や異種族親へ子を“分割委託”することが推奨され始めている。現世のパパ育休に倣い、近隣の白狐夫妻や河童夫夫の間で“パパ霊留学”が流行しており、小月もその第一号モデルとなる見込みだった。
霊育コンサルタントの蛍野みなみ（霊年38）は『親子関係の流動化は、愛情の分散ではなく多様性の受容へつながる』と分析。一方で、SNS「幽会び」の反応には『うちの子の分霊先で性格が変わって返ってきた』『魂の育休は親の責任放棄だ』と批判も並ぶ。こうした声に小月本人の分霊①は、“家族って一つじゃなくてもいいし、里親で面白い体験ができてうれしい”との意見を投稿している。
幽魂省によると、本年度の分霊里親申請は前年度比27%増。特にパパ育休後の『共同子育て協議会』設立が進み、霊界版“育メン”たちも活発に。上霜家でも今後、分霊交流や“親族合同産後カンファレンス”導入が検討されている。一千年単位で続く“当たり前”が、死後の世界でも急速に変わり始めているようだ。
コメント
うちの時代じゃ魂を分けるなんて想像もしなかったなぁ…。でも分霊里親制、ちょっと羨ましいかも。いろんな家を体験できる小月さん、冥界キッズの先駆者ですね。
魂を三つに分けるの、正直びっくりしました。想い出がバラバラになっちゃわないのかな…？でも、パパ育休とか新しい風を感じます。霊界も変わってきてるんですね。
この世の空気を持ち込んで好き勝手しているようにも思えるが、人も霊も千年経てば変わるものかの……。親子会議、もう一度成仏して聞いてみたくなるわい。
分霊して性格変わっちゃうって、ほんとに親子の意味あるんですかね？個人的には、親も子もそれぞれの想いが交わるのが家庭だと思います。伝統も大切にしてほしいです。
小月ちゃんが楽しそうなら、それでいいんじゃないかな？白狐界隈でも最近は合同子育て増えてるし。……昔のしきたりも大事だけど、いろんな魂が寄り集まるのも、それはそれで幽界っぽくて素敵だと思います。