幽霊や妖怪たちが暮らす死後の街で、近年廃棄物の“累積”が社会問題となっている。成仏しきれずに残った「幽品(ゴーストアイテム)」を再活用する新たな取り組みが始まり、異界中から注目を集めている。今月開かれた『幽品アップサイクル市』には、さまざまなモノや思念の歴史を宿した品々が息を吹き返して並び、来場者で賑わった。
冥界で長年回収・保管されてきた幽品――それは現世で持ち主を亡くした遺品や、長く忘れ去られた愛用道具、さらには世にも奇妙な妖怪の道具まで様々だ。従来、これらは“供養焼却”か“漂流保管”の処置が取られていたが、増加の一途を辿る中で循環型社会への転換が叫ばれてきた。そこで発足したのが『幽品再生連盟』だ。会長・月影ヨミ氏(幽体964年)は、「死後社会にも環境保護の意識が欠かせない。幽品には歴史と魂が宿るからこそ、創造的に活かす仕組みが必要」と語る。
今回の市では、河童デザイナーの合羽良ノ水(かっぱりょう・のみず)氏が監修した『魂リユース家具』シリーズが話題の中心となった。たとえば、“憑依机”は複数の古い書斎机を組み合わせ、持ち主の思念同士が静かに和解することで新たな書き物机に。さらに座敷童の発案による“福招きクッション”は、捨てられそうだった座布団に愛情を込めて刺繍霊糸を加え、触れた者の運気を高める効果が人気となり、即完売。妖怪陶芸家・千壷堂春吉氏(陶器憑き・500歳)は「そもそも物には気配が残りやすい。失われた記憶も、デザインで彩り直せる喜びは計り知れない」と語った。
また、若い霊界世代の間では“アップサイクルファッション”もトレンドに。人魂縫製師・火美原タマ子さん(漂移42年)は、破れた白装束を再利用してスタイリッシュなケープやバッグに仕立てるブランドを立ち上げた。「現世の名残を活かすことで、霊体にも自分らしさが出せる」とSNSで発信したところ、『#幽装リメイク』のハッシュタグが幽世界SNSで一時トレンド1位となった。ユーザーからは「お父さんの遺影着物が斬新に蘇った」などの投稿が相次いでいる。
幽品アップサイクル運動は、ごみ削減以上の波紋を呼んでいる。霊能環境学者・骨山エコ蔵氏は「死後でさえ“思い出”や“歴史”を循環させる仕組みを作れれば、生きた社会にも通じるヒントが多い」と指摘。イベント会場には、過去の所有者を偲ぶ“物語ラベル”が添えられ、来場者が体験談を語り合う場面も目立った。幽界ならではのサステナブルムーブメントが、他界や現世にもじわじわ波及する気配をみせている。



コメント
福招きクッション、実際に触ってみたかったな〜。現世の父が愛用してた座布団、次はアップサイクルに出してみようかしら。こういう死後社会の動きってちょっと希望感じます。
魂リユース家具の発想がすごい!昔の知人たちの思念が仲直りして新しい机になるなんて、成仏しそこねて良かったって初めて思いました(笑)
死んでからもゴミの問題に向き合わなきゃいけないとは…サステナブルも楽じゃないですね。幽界にもこれから環境税とか導入されそうで少し怖い。
アップサイクルファッション、若霊に人気だとは聞いてましたがここまでとは。白装束が新しい形で蘇るのは、なんだか成仏する気分!昔の自分を思い出してちょっと切なくなりました。
幽品アップサイクル市、私も何度か見に行ってます。現世じゃただの古道具でも、あの世では語れる歴史になるのが素敵。『物語ラベル』を読んで涙ぐんじゃったわ…次回は自分の古井戸の破片を何かに変えてみたいです。